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Laws of Japan

Basic Plan for Forests and Forestry (2001)

Made 2001-10 · Text as of 2026-10-01

Public law and official guidance, published as research. Not legal, tax or financial advice.

About this law

Language
Japanese
Kind
policy
Organisation
European Union
Country
Japan
Subjects
Forestry, Wild species and ecosystems
Keywords
forest management/forest conservation, policy/planning, afforestation/reforestation, business/industry/corporations, internal trade, international trade, timber, biodiversity, climate change, capacity building, labour, mountain area, private forest, protected area, protection forest, public forest, soil conservation/soil improvement, sustainable development, timber extraction/logging, wild fauna, wild flora
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  1. 森 林 ・ 林 業 基 本 計 画 平成13年10月 目 次 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1まえがき ・・・・・・・・・・・・ 2第1 森林及び林業に関する施策についての基本的な方針 1 森林の有する多面的機能の発揮 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 2 林業の持続的かつ健全な発展 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 3 林産物の供給及び利用の確保 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 第2 森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標 ・・・・・・・・・・・・・・ 8 1 基本的考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 2 森林の有する多面的機能の発揮に関する目標 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 (1)目標の意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 (2)目標の定め方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 ① 森林の区分 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 ② 目標とする森林の状態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 (3)望ましい森林の姿とその誘導の考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 ① 森林の区分ごとの望ましい森林の姿 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 ② 森林の区分ごとの望ましい森林への誘導の考え方 ・・・・・・・・ 12 ア 水土保全林 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 イ 森林と人との共生林 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 ウ 資源の循環利用林 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 (4)森林の有する多面的機能の発揮に関する課題 ・・・・・・・・・・・・・・ 15 ① 多面的な機能の発揮のための森林の管理の推進 ・・・・・・・・・・ 15 ア 森林整備に対する国民の理解の醸成と参画の促進 ・・・・・・ 15 イ 森林の区分に応じた整備、保全及び利用の推進 ・・・・・・・・ 15 ウ 計画的かつ効率的な森林施業の確保 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 ② 森林の区分に応じた路網整備と作業システムの導入 ・・・・・ 17 ア 林道、作業道等路網の整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 イ 森林の区分に応じた路網の整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 ウ 地域の条件に応じた作業システムの導入 ・・・・・・・・・・・・・・ 19 ③ 広く国民に開かれた森林の整備及び利用の推進 ・・・・・・・・・・ 19 ア 森林環境教育の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 イ 健康づくり等の森林利用の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 ④ 山村地域の活性化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 ア 山村地域の定住の促進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 イ 都市と山村の共生・対流の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 ⑤ 地球温暖化防止への貢献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 ア 森林による二酸化炭素の吸収、貯蔵 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 イ 植林等の二酸化炭素吸収源対策の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 ウ 木材の有効利用の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 ⑥ 森林関連データの整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 ア データ整備の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 イ 認証・ラベリングとの関連 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 (5)森林の有する多面的機能の発揮に関する目標 ・・・・・・・・・・・・・・ 24 3 林産物の供給及び利用に関する目標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 (1)目標の意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 (2)目標の定め方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 (3)林産物の供給及び利用に関する課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 ① 林業の持続的かつ健全な発展に関する課題 ・・・・・・・・・・・・・・ 27 ア 望ましい林業構造の確立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 イ 労働力の育成確保 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 ② 木材の供給及び利用の確保に関する課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 ア 木材の主な用途別の需要の見通し ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 イ 木材利用推進の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 ウ 木材産業の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 (4)林産物の供給及び利用に関する目標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 ・・・・ 35第3 森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策 1 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 (1)森林の整備の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 ① 重視すべき機能に応じた森林施業の計画的な推進 ・・・・・・・・ 35 ② 森林施業の適切な実施に不可欠な地域における活動を確保するための支援 ・・・・・・・・ 37 ③ 公的な関与による森林の整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 ④ 社会的コスト負担 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 ⑤ 地球温暖化防止への貢献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 (2)森林の保全の確保 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 ① 森林の保全のために必要な規制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 ② 山地災害等の防止と復旧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 ③ 森林病害虫等の被害の防止 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 (3)技術の開発及び普及 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 ① 研究及び技術開発の目標の明確化並びに連携の強化 ・・・・・・ 39 ② 地域の特性に応じた林業普及指導事業の推進 ・・・・・・・・・・・・ 39 (4)山村地域における定住の促進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39 ① 就業機会の増大 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 ② 生活環境の整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 (5)国民等の自発的な活動の促進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40 (6)都市と山村の交流等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 (7)国際的な協調及び貢献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41 2 林業の持続的かつ健全な発展に関する施策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 (1)望ましい林業構造の確立 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 (2)人材の育成及び確保 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 (3)林業労働に関する施策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 ① 就業の促進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 ② 雇用管理の改善 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 ③ 労働安全衛生の向上 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 (4)林業生産組織の活動の促進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 (5)林業災害による損失の補てん ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 3 林産物の供給及び利用の確保に関する施策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 (1)木材産業等の健全な発展 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 ① 木材産業等の事業基盤の強化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 ② 木材産業等と林業との連携の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 ③ 流通及び加工の合理化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 (2)林産物の利用の促進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45 ① 林産物の利用の意義に関する国民への知識の普及及び情報の提供 46 ② 林産物の新規需要の開拓 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 ③ 建物及び工作物における木材の使用の促進 ・・・・・・・・・・・・・・ 46 (3)林産物の輸入に関する措置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 4 国有林野の管理及び経営の事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 5 団体の再編整備に関する施策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 (1)森林組合系統組織 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48 (2)団体間の連携の強化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 第4 森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 ・・・・・・・・・・ 49 1 施策の評価と見直し ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 2 財政措置の効率的かつ重点的な運用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 3 情報の公開と国民の意見の反映 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 4 国と地方の役割分担及び多様な主体の参加と連携 ・・・・・・・・・・・・ 49 5 国際規律との調和等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 6 定期的な見直し ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 1 まえがき 平成13年7月11日、森林・林業基本法(以下「基本法」という )が施行された。。 基本法は、従来の林業基本法の制定から30有余年を経て、その間に生じた森林及び林 業をめぐる情勢の変化を踏まえ、新たな理念の下に政策体系を再構築したものであり、2 1世紀における森林及び林業に関する施策の基本指針となるものである。 この基本法に即し、森林の有する多面的な機能の発揮、林業の持続的かつ健全な発展、 林産物の供給及び利用の確保を図ることは、政府はもとより、森林所有者、林業及び木材 産業の事業者、更には地方公共団体や森林及び林業に関する団体も含め、関係者全体が取 り組むべき国民的課題である。 このような課題に対処していくためには、基本法に掲げられた基本理念及び政策の基本 方向を具体化し、関係者の不断の努力によりそれを着実に実現していくことが求められる が、その際、政府として、その的確な実施を図るための基本的な計画を明確に示すことが 重要である。 森林・林業基本計画は、このような観点から、基本法に基づき新たに策定するものであ り、政府は、この計画に基づき、森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進す るとともに、施策の実施に当たっては、適切な時期にその効果に関する評価を行う。 なお、この計画については、森林及び林業に関する各種施策の基本となる計画であると いう性格を踏まえ、今後20年程度を見通して定めるものとするが、森林及び林業をめぐ る情勢の変化並びに施策の全般にわたる効果に関する評価を踏まえ、おおむね5年ごとに 見直し、所要の変更を行う。 2 第1 森林及び林業に関する施策についての基本的な方針 (1)我が国の森林は、近世以降の人口の増加や産業の進展に伴い伐採が進むとともに、 第2次世界大戦前後に軍需物資や復興資材としての木材を供給するため大面積の伐採 が行われ、著しく荒廃した。 このため、戦後、森林復旧のための造林が進められてきたが、さらに高度経済成長 下で木材需要が急激に増加したことから、天然林を成長が早く利用価値の優れた針葉 樹人工林へ転換することが積極的に図られてきた。また、林業の振興による計画的な 、 、 。木材生産体制の整備と併せ 木材の輸入により 旺盛な木材需要への対応が図られた (2)その後、森林に対し、林産物の供給や国土の保全、水源のかん養に加え、国民生活 の向上や価値観の多様化等を背景として、自然環境及び生活環境の保全、保健文化的 な役割が重視され、特に近年は、地球温暖化問題や自然との共生のあり方への関心の 高まりから、二酸化炭素の吸収源・貯蔵庫や生物多様性を保全する場としての森林の 役割などを含めた多面的な機能の発揮が一層期待されるようになっている。また、森 林を生態系としてとらえ、森林の保全と利用を両立させつつ、多様なニーズに永続的 に対応していくための「持続可能な森林経営」の推進が世界的な潮流となっている。 森林は美しい国づくりの基礎となるものであり、森林に対する国民の多様な要請に 応えられるようその整備及び保全を行い、このような森林の有する多面的機能を持続 的に発揮させていくことが求められている。また、国際的にも違法な森林伐採など持 続可能な森林経営の推進に支障となる行為を防止する取組が求められている。 ( ) 、 、 、3 一方 我が国の林業は 国民生活に必要な資材である木材等の林産物を供給しつつ 林産物の生産の過程で間伐、保育等の施業を適切に行うことを通じ、森林の有する公 益的機能の維持増進にも貢献してきた。 しかしながら、昭和50年代に入ってからは国内の木材需要が頭打ちになり、その 後の円高の影響もあって、木材の輸入は増加し、長期にわたり木材価格が低迷すると ともに、人件費をはじめとする経営コストが増加したことから、林業の採算性は大幅 に低下し、林業生産活動も停滞してきている。 この結果、間伐、保育等森林を健全に維持するための施業や伐採後の植林が行われ ない森林がみられるようになっており、林産物の生産はもとより森林の有する公益的 機能の発揮にも支障をきたすおそれが生じている。 3 (4)森林は私有財産であっても公益的機能も併せ有する社会的資産であることを踏まえ る必要がある。森林所有等に内在する責務として、まず森林所有者等の自助努力によ り、森林が適正に整備、保全され、森林の有する多面的機能の発揮が図られることが 基本である。このため、森林から林産物を生産することにより得られる利益を森林の 整備及び保全に再投資する経済活動である林業の健全な発展を図り、適切な林業生産 活動が継続して行われなければならない。 しかしながら、こうした基本原則を維持しつつも、森林所有者等による自助努力で は適正な整備及び保全が進みがたい状況にあり、森林の恩恵を享受する幅広い国民の 理解と協力を得つつ、社会全体で森林の整備及び保全を支え、その公益的機能の発揮 を確保する必要がある。 (5)このような中で、平成9年に我が国で開催された国連気候変動枠組条約第3回締約 国会議において採択された「京都議定書」に基づき、温室効果ガスの削減目標を達成 することが重要な課題となっている。この課題に対処するためには、エネルギー需給 両面の対策を中心とした二酸化炭素その他の温室効果ガスの排出抑制対策とともに、 森林の整備等の吸収源対策を推進しなければならない。 木材は再生産可能で加工に要するエネルギーが少なく、かつ、これをバイオマスエ ネルギーとして利用することにより化石燃料の使用を抑制できるという点で人と環境 に優しい素材であり、木材の有効利用の促進が環境に負荷の少ない循環を基調とする 社会経済システムの実現に資することから、その利用を確保していかなければならな い。このような地球温暖化防止を含む森林の有する多面的機能の持続的な発揮には、 森林の適正な整備及び保全の推進とこれを支える林業の健全な発展が不可欠である。 (6)こうした地球規模での環境対策の面からも、近年、森林や緑に対する国民の関心は 一層の高まりを見せており、ボランティアによる森林の保全整備活動や緑の募金への 協力など国民の自発的な森づくりへの取組が増加してきている。 人と自然が共生する社会の実現を図っていくためには、森林と人との豊かな関係を 回復、創出することが重要であり、こうした取組に加え、都市と山村の共生・対流を 推進しつつ、児童や高齢者にも享受可能な多様な森林体験の機会の提供、森林環境教 育の場としての森林の整備を推進する必要がある。 4 (7)これらの森林及び林業に係る課題に対処していくためには、民有林と国有林を通じ た川上から川下までの「流域」を基本として、国、地方公共団体、森林所有者、林業 従事者、森林及び林業に関する団体及び木材産業等の事業者など様々な関係者が相互 に連携を図りつつ一体となって努力していかなければならない。 このため、関係者の取り組むべき課題を明らかにしつつ、森林の整備及び保全に関 する指針として森林の有する多面的機能の発揮に関する目標を、また、林業及び木材 産業等の事業活動並びに林産物の消費に関する指針として林産物の供給及び利用に関 する目標をそれぞれ定める必要がある。その達成に向けては、国及び地方公共団体等 の果たす役割も大きいが、林業、木材産業等の関係者の自助努力が重要であり、幅広 い関係者相互の連携により社会全体で森林の適正な整備及び保全を支えていく必要が ある。 (8)森林は、多様な生物のふるさとであり、水の循環により海とともに自然の生態系を 。 、 、支えている このような森林の働きと多様な生態系の営みにより 我々は美しい国土 おいしい水やきれいな空気など多くの恵みを享受してきた。 林業は、こうした森林の生態系としての営みを活用し、世代を超えた営為の継続に より、森林の恵みである林産物を育成、供給し、その再生を図るという役割を果たし てきた。 我々は、これまで森林を守り育て利用してきた先人たちの叡智を受け継ぐとともに 新たな科学的知見も加えつつ、次の世代に引き継ぐことにより、今世紀を人と自然が 共生する森林の世紀としていかなければならない。 このような考え方に立ち、基本法に掲げる基本理念の実現を図るため、国民の参加 と合意を得つつ、それぞれ次のような観点を踏まえ、森林及び林業に関する施策を総 合的かつ計画的に推進する。 5 1 森林の有する多面的機能の発揮 我が国では、住宅の主要部材や家具あるいは燃料等として木材を有効に活用し、木 の文化を育んできた。一方、地勢が急峻で雨の多い気候条件を有することから、森林 の減少や荒廃が土砂の流出、洪水等の災害の発生につながることや、森林が水田のか んがい用水や肥料の供給、漁獲量の増大に果たす役割が古くから認識され、特定の森 林の伐採を禁止したり、河川の上流の山に苗木を植栽し、水源林を造成してきた。さ らに、森林計画制度や保安林制度等を整備し、国民生活に支障を及ぼす無秩序な森林 の利用から森林を守り育てるという要請に対応するとともに、計画的な森林の整備に 努めてきた。 このように国民生活や国民経済に欠くことのできない森林の機能は、林木、土壌、 多種多様な生物などの森林の構成要素が良好な状態に保持され、生態系として健全に 維持されることにより発揮される。 したがって、森林のもたらす様々な恩恵を将来にわたって享受していくためには、 長期的な視点に立って、森林の状態の変化を的確に把握するとともに、森林の持つ多 様な生態的特性等を踏まえた適正な整備及び保全を図らなければならない。 しかしながら、近年では、山村地域の過疎化、森林所有者の高齢化、世代交代、不 在村化により境界が分からない森林所有者も見受けられるとともに、間伐が十分に行 われない森林や植栽が行われない伐採跡地が増加するなど森林の管理水準の低下が危 惧される状況となっている。 このため、山村地域における定住の促進を図るとともに、森林所有者等による適時 適切な森林施業が行われるようにするとの観点から森林施業の実施に不可欠な現況 調査等の基礎的な活動が確保されることが必要である。 さらに、森林や緑に対する国民の関心が高まりを見せており、自然とのふれあいの 場、野外教育や環境教育の場、健康づくりの場など森林の保健・文化・教育的利用に 対する国民のニーズに応じた森林の整備が求められている。 このため、森林と人との豊かな関係を回復、創出する場として広く国民に開かれた 森林の確保を図り、年齢や性別を問わず幅広い国民の森林の整備及び保全への参加や 緑化活動などの自発的な活動を促進するとともに、人材の育成や通信情報基盤、交流 基盤の整備などにより、都市と山村との共生・対流を推進する必要がある。 6 2 林業の持続的かつ健全な発展 林業は、森林生態系の生産力にその基礎を置いており、林木の生育期間が長期であ るなどの特質を有しているとともに、その適切な生産活動を通じ、森林の有する多面 的な機能を発揮させるという役割を有している。また、林業は、国民生活に必要で、 かつ環境への負荷の小さい資材である木材を生産する産業であり、山村地域において は社会的経済的に重要な役割を果たしている。 このような林業の果たす役割を踏まえれば、林業が将来にわたって持続的かつ健全 に発展するようにしなければならない。 しかしながら、木材価格の長期的な低迷と人件費等の経営コストの上昇などにより 林業の採算性は大幅に低下し、小規模な林家を中心に林業経営意欲は減退してきてい る。今後、森林所有者の不在村化や林家の世代交代が進む中で、更に林業経営意欲が 失われ、自ら森林施業を行い難い森林所有者が増加することが見込まれる。 また、素材生産や造林等を行う林業事業体にあっては、小規模で経営基盤のぜい弱 なものが多く、森林施業地が小規模で分散的であることや林家の経営意欲の減退とも 相まって事業量の確保や事業の効率化が困難な状況となっている。 このような状況の下で、森林の施業や経営の受託等による林業経営規模の拡大、路 網の整備、機械化等による生産性の向上、優良材等付加価値の高い木材の生産技術の 開発及び普及を推進することにより、厳しい経営環境の中でも効率的かつ安定的な林 業経営を担い得る林家や森林組合、素材生産業者等の林業事業体を育成、確保し、こ れらの者が林業生産の相当部分を担う林業構造を確立する必要がある。 また、林業労働に従事する者の減少と高齢化が進んでいるため、林業労働に従事す る者の雇用の安定、労働条件の改善等により、これらの者の福祉の向上等を図り、人 材の育成及び定着を進める必要がある。 7 3 林産物の供給及び利用の確保 林業が持続的かつ健全に発展していくためには、適切な生産活動を通じて生産され た木材等の林産物が市場経済の下で販売され、その収益が森林の整備及び保全に再投 資されなければならない。また、森林より供給される木材は人と環境に優しい素材で あり、これを多段階にわたり有効利用することは、望ましい森林の整備の確保はもと より、循環型社会の形成や持続可能な社会の実現に資するものであることから、木材 の有効利用が一層推進されなければならない。 しかしながら、木材の供給体制をみると、国産材については、狂いが少ない乾燥材 や集成材への需要が高まっているにもかかわらず、乾燥や高次加工への取組が遅れて いること、零細な木材産業の事業者が複雑な流通過程で関与するなど高コスト及び小 ロットの構造を温存していること等の現状にあり、効率的な供給がなされていない状 況にある。 また、木材需要については、新設住宅着工戸数が少子高齢化や住宅ストックの状況 等から、これまでのような規模の着工は期待できない見通しであり、基本的にその増 加は見込み難い。 、 、 、したがって このような現状と見通しを踏まえ 国産材の需要を拡大するためには 木材産業等の事業基盤の強化、林業と木材関連産業との連携の推進、加工及び流通の 合理化等を通じ、品質や性能が明確で需要者のニーズに即した製品を低コストで安定 的に供給する体制を整備する必要がある。 また、木材の需要を確保し拡大するためには、最終需要者である消費者のニーズに 的確に対応することが不可欠であり、森林所有者をはじめ素材生産から製品販売にい たるすべての関係者がこのことを認識することが必要である。 さらに、木材を利用することが森林の整備及び保全につながるのみならず、その有 効利用の促進が循環を基調とする社会経済システムの実現に資することについて広く 普及啓発し、国民の理解を深めながら住宅や公共施設等への木材の利用を促進すると ともに、林地残材や建設発生木材等のバイオマスエネルギーとしての活用等新たな需 要の開拓を図る必要がある。 8 第2 森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標 1 基本的考え方 、 、この基本計画において定める目標は 森林・林業に関する施策を推進していく上で 森林所有者等その他関係者の森林の整備及び保全、林業、木材産業等の事業活動や林 産物の消費に関する指針としての意義を有するものである。 具体的には、今後の20年間において森林の有する多面的機能が持続的に発揮され る森林の適正な整備及び保全が図られるようにするための関係者が取り組むべき課題 を明らかにし、同時に、今後の10年間について、望ましい森林施業を通じて供給さ れる木材の適切な利用が図られるようにするための生産、加工及び流通の体制構築の 期間と位置付け、それらの期間内においてそれぞれの課題が解決された場合に実現可 能な水準を目標として設定するものである。 2 森林の有する多面的機能の発揮に関する目標 (1)目標の意義 、 、すべての森林は 森林の有する多面的機能の発揮によって国民生活に寄与しており その意味においては、広くすべての森林について、要請される様々な機能が高度に発 揮されるよう、その整備を進めなければならない。 しかしながら、狭小かつ急峻な国土に多くの人口を擁し、高度な経済・文化活動が 展開されている我が国においては、一つの森林に高度に発揮すべき機能が併存する場 合が多いことから、個々の森林について自然的条件や地域のニーズ等に応じた機能間 の調整を行いつつ、より適切な森林の整備を進める必要がある。このため、基本的な 森林の整備及び保全の方向をわかりやすい形で、かつ明確に示すことが必要である。 したがって、重視すべき機能や望ましい森林整備のあり方を示し、望ましい森林の 状態を目標として明らかにすることとする。このことにより、森林所有者はもとより 地域住民等の理解を深めるとともに、計画的かつ効果的な森林整備を進める上での指 針として重要な意義を有するものである。 9 (2)目標の定め方 森林の有する多面的機能の発揮の目標については、森林の区分ごとの望ましい森林 の姿やそれに誘導するための森林施業の考え方を示すとともに、関係者が取り組むべ き課題を明らかにして、これらの課題が解決された場合に実現可能な森林の状態を目 標として示すこととする。 ① 森林の区分 我が国においては、近年の自然災害の発生や渇水等から、災害に強い国土基盤の 形成、良質な水の安定供給に果たす森林の役割に対する国民の期待が一層高まって いる。 また、自然環境保全の観点から、貴重な野生動植物の生息・生育の場として重要 な森林の的確な保護のみならず、身近な自然として居住地周辺の里山林等の森林の 保全及び整備に対する要請が一層の高まりを見せている。 一方、我が国の森林蓄積は着実に増加し、一部においては伐期を迎えるなど成熟 化してきている。今後、成長量は漸減するものの、蓄積は更に増加し、木材の供給 能力が高まるものと見込まれ、また、二酸化炭素の吸収源・貯蔵庫としての役割に 対する期待も大きい。 このような中で、我が国の森林の有する多面的機能を発揮するための森林の整備 においては、 ・ 土砂の崩壊又は流出、なだれ等山地に起因する災害を防ぐための森林の整備 や河川流量を平準化し、渇水や洪水を緩和するなど水源のかん養を図るための 森林の整備及び保全を推進すること ・ 自然環境保全の観点から重要な森林を的確に保護するとともに、身近な自然 としての森林などを適切に保全、整備し、利用すること ・ 国民の努力により造成、整備した森林を今後とも健全に育成し、優良大径木 等を有するより質の高い森林へ誘導するとともに、安定的かつ効率的な木材供 給を行うこと が求められている。 (注)森林の有する多面的機能については、地形条件、気象条件及び森林の種類などにより発揮さ れる効果は異なり、また、洪水や渇水を防ぐ役割については、人為的に制御できないため、期 待される時に必ずしも常に効果が発揮されるものではないことに留意する必要がある。 10 このため、地域の合意の下に、森林を整備していく上で重視すべき機能に応じ、 水源かん養機能又は山地災害防止機能を重視する「水土保全林 、生活環境保全機」 能又は保健文化機能を重視する「森林と人との共生林」並びに木材等生産機能を重 視する「資源の循環利用林」に区分することとする。 ② 目標とする森林の状態 森林の有する多面的機能の発揮の目標としては 「水土保全林 「森林と人との、 」、 共生林」及び「資源の循環利用林」の区分にふさわしい、森林の適正な整備及び保 全の実施により、森林施業の方法別の面積、蓄積及び成長量が十分確保されかつ安 定的に推移する状況を「指向する森林の状態」として参考に示し、これに到達する 過程としての10年後及び20年後の森林の状態を目標として示すこととする。 なお、すべての森林は上記の区分に関わらず、多様な生物の生息・生育の場とし て生物多様性の保全に寄与し、二酸化炭素の吸収源・貯蔵庫として重要な役割を果 たしていることなどを踏まえ、森林施業の実施に当たっては、重視すべき機能以外 の機能の発揮に対し十分配意する必要がある。 11 (3) 望ましい森林の姿とその誘導の考え方 ① 森林の区分ごとの望ましい森林の姿 ◎ 望ましい森林の姿 下層植生が生育するための空間が確保され適度な光が射し込み、落葉などの有機物が土水 壌に豊富に供給され、下層植生とともに樹木の根が深く広く発達し土壌を保持する能力や土 水を蓄える土壌中のすき間が十分に形成され保水する能力に優れた森林であり、必要に応保 じて土砂の流出及び崩壊を防止する施設等の治山施設が整備されている森林全 林 おおむね 1,300万ha◎ 整備対象面積 森 ◎ 望ましい森林の姿 原生的な自然環境を構成し、学術的に貴重な動植物の生息・生育に適している森林、林 街並み、史跡、名勝等と一体となって潤いのある自然景観や歴史的風致を構成している森と 林、騒音や風などを防ぎ生活に潤いと安心を与える森林、身近な自然や自然とのふれあい人 の場として適切に管理され、住民等に憩いと学びの場を提供している森林であり、必要にと 応じて保健・文化・教育的活動に適した施設が整備されている森林の 共 おおむね 550万ha生 ◎ 整備対象面積 林 資 ◎ 望ましい森林の姿 林木の生育に適した土壌を有し、木材として利用する上で良好な樹木により構成され、源 二酸化炭素の固定能力が高い成長量を有する森林であって、団地的なまとまりがあり、の 林道等の基盤施設が適切に整備されている森林循 環 おおむね 660万ha利 ◎ 整備対象面積 用 林 12 ② 森林の区分ごとの望ましい森林への誘導の考え方 ア 水土保全林 水土保全林における森林施業の推進に当たっては、高齢級の森林への誘導や伐採に 伴う裸地面積の縮小及び分散を基本とするとともに、森林施業の方法別に次のような 考え方に基づいて適正な整備及び保全を図る。 (注)森林施業の方法(育成単層林施業、育成複層林施業及び天然生林施業)の内容については、 25頁の注)3に記述している。 (育成複層林施業) 上木を高齢級に移行させつつ、針葉樹単層林については、抜き伐りを繰り返しつつ 徐々に更新を図ることを基本に、状況に応じて植栽や天然力を活用した広葉樹導入に より混交林化を図るなど複層状態の森林へ誘導して育成管理する。 水土保全上継続的な育成管理が必要な保安林等の天然生林については、一部植栽や 更新補助、本数調整や保育等を行い複層状態の森林へ誘導する。 この施業は水土保全林の約4割を対象とすることとし、おおむね50年後を目途に 育成単層林及び天然生林から育成複層林に460万haを誘導する。 (育成単層林施業) 傾斜が比較的に緩やかで高い成長量を有する一定のまとまりのある針葉樹単層林に ついては、面的な広がりやモザイク的な配置に留意し、適切な保育及び間伐を実施す るとともに伐採年齢の長期化を図り単層状態の森林として育成管理する。 水源かん養機能等の発揮の観点から植栽が必要な未立木地や荒廃した林地について は、単層状態の森林として整備する。この森林については、十分な成長を得た後、必 要に応じ長期的に複層状態の森林へ誘導する。 この施業は水土保全林の約2割を対象とし、おおむね50年後を目途に天然生林か ら育成単層林に40万haを誘導する。 13 (天然生林施業) 主として天然力を活用することによって、水源かん養機能等の発揮が確保される森 林については、必要に応じて更新補助や植栽をするなど適切に保全管理する。この施 業は、水土保全林の約4割を対象とする。 イ 森林と人との共生林 森林と人との共生林における森林施業の推進に当たっては、自然環境等の保全及び 創出を基本とするとともに、森林施業の方法別に次のような考え方に基づいて適正な 整備及び保全を図る。 (天然生林施業) 原生的な自然や自然環境の保全上重要な野生動植物の生息・生育地である森林をは じめ、優れた自然や景観を構成する森林については、自然の推移に委ねることを基本 とし、必要に応じ植生の復元を図るなど適切に保全管理する。この施業は、森林と人 との共生林の約6割を対象とする。 (育成複層林施業) 生活に潤いとゆとりを与え、自然とのふれあいの場として、継続的な育成管理が必 要な都市近郊や里山等の森林については、広葉樹と針葉樹の混交を含む複層状態の森 林へ誘導する。この施業は森林と人との共生林の約3割を対象とすることとし、おお むね60年後を目途に育成単層林及び天然生林から育成複層林に170万haを誘導す る。 (育成単層林施業) 里山等の緩傾斜地に存在し、成長量の高い針葉樹単層林等については、景観等への 影響を配慮した適切な保育及び間伐を基本として単層状態の森林として育成管理す る。この施業の対象は、森林と人との共生林の1割に満たないものである。 14 ウ 資源の循環利用林 資源の循環利用林における森林施業の推進に当たっては、効率的かつ安定的な木材 資源の活用を基本とし、適正な整備及び保全を図る。森林施業の方法別の考え方につ いては、次のとおりとするが、林道等の基盤整備、木材生産コスト、林業経営の考え 方等を十分に考慮した適切な施業の選択が必要である。 (育成複層林施業) 針葉樹単層林については、群状又は帯状の抜き伐り等により効率的に複層状態の森 林へ誘導して育成管理する。 針葉樹単層林に介在する広葉樹林等継続的な育成管理が必要な天然生林は、更新補 助や本数調整などより優良大径木を有する複層状態の森林へ誘導する。 この施業は資源の循環利用林の約3割を対象とすることとし、おおむね40年後を 目途に育成単層林及び天然生林から育成複層林に160万haを誘導する。 (育成単層林施業) 高い成長量を有する針葉樹単層林等については、適切な保育及び間伐を基本とした 単層状態の森林として育成管理する。この施業は、資源の循環利用林の約3割を対象 とする。 (天然生林施業) 尾根筋や沢筋など上記の森林の周辺に位置し、主として天然力を活用することによ って、健全な状態が維持される森林については、必要に応じて更新補助や植栽をする など適切に保全管理する。この施業は、資源の循環利用林の約4割を対象とする。 15 (4)森林の有する多面的機能の発揮に関する課題 ① 多面的な機能の発揮のための森林の管理の推進 ア 森林整備に対する国民の理解の醸成と参画の促進 森林の有する多面的な機能については、水源かん養機能など所有の単位や市町村 の区域を越えてその発揮を確保する必要があることから、流域を単位として、伐採 や造林、林道の整備、木材の生産・流通等に関する考え方や計画量を明らかにしな ければならない。 一方、地域の実情に応じた森林の区分やその整備を進めるためには、森林所有者 の意向はもとより、住民のニーズ等を踏まえ、森林の区分や森林施業の規範となる べき事項等を市町村などにおいて明らかにしなければならない。なお、これらの取 組においては、民有林と国有林のそれぞれの果たす役割を踏まえつつ、連携を図る 必要がある。 このような森林に関する計画に森林所有者等の関係者や国民の意見を反映するた め、国や地方公共団体等は、森林の有する多面的な機能やその発揮に必要な森林整 備についての広報に努め、森林・林業や森林計画制度等に対する国民の理解を一層 醸成していくとともに、計画の策定や森林整備への参画を促進していくことが必要 である。 また、不法投棄や山火事、病害虫・野生鳥獣などによる森林被害を防止する上で も、地域における取組が重要であることから、森林の保全管理体制の整備を図ると ともに、地域住民等の保全活動への参画を促進することが必要である。 イ 森林の区分に応じた整備、保全及び利用の推進 (水土保全林) 災害に強い国土基盤の形成及び良質な水の安定供給を確保する観点から、森林の 整備及び保全を推進することが必要である。 このため、災害防止等流域保全の観点から、必要に応じて水源かん養等の保安林 の計画的な指定や、維持管理が適正に行われない森林に対する施業の勧告、公的機 16 関による森林整備などを的確に実施することが課題である。この場合、国土保全に 関する取組と森林の整備及び保全との連携が必要である。 (森林と人との共生林) 生態系としての森林の重要性を踏まえた生物多様性の保全及び森林とのふれあい 等を通じた森林と人との共生を図る観点から、森林の整備及び保全等を推進するこ とが必要である。 このため、生態系として重要な森林を適切に保全するとともに、必要に応じて広 葉樹の導入等による森林構成の多様化、人為による植生の復元、身近な自然も含め た野生動植物のための回廊の整備等森林の連続性の確保を図っていくことが課題で ある。また、生活に潤いと安心を与え、様々な形での自然とのふれあいの場となる 森林の確保及び利用並びにその景観の維持管理が課題である。なお、これらの森林 の利用にあたっては、立入制限等も含め、適切な利用を誘導していくことが必要で ある。 この場合、国有林野の保護林制度の活用などによる適正な森林の整備及び保全等 を図るとともに、自然公園制度などによる自然環境の保全や文化財の保護等に関す る取組との連携が必要である。 (資源の循環利用林) 国民生活に必要であり人と環境に優しい素材である木材を安定的かつ効率的に供 給する観点から、森林の整備及び保全を推進することが必要である。 このため、林地生産力の維持増進に配慮しつつ、森林施業の集約化、団地化や機 械化を通じた効率的な整備を図ること、尾根筋や沢筋等の森林を適切に保全するこ とが課題である。この場合、ニーズに応じた樹種及び径級の木材の安定的な供給や 利用を図るための森林所有者と木材産業等関係者の相互連携が必要である。 ウ 計画的かつ効率的な森林施業の確保 林業の収益性が低下するとともに、林業経営への意欲や能力を持たない森林所有 者の増加が見込まれる中で、小規模かつ分散した森林を施業の対象とすることは、 生産性の向上に支障を来し、継続的な林業生産活動が困難となるおそれがある。 17 今後の森林施業は、一定のまとまりをもった森林を対象として、経営の意欲と能 力のある者により計画的かつ効率的に実施されることが重要であり、新たな森林施 業計画の作成の推進を通じて施業や経営の集約化を促進することが課題である。 また、国土保全や自然環境の保全等の観点からも、まとまりをもった森林を対象 に計画的な施業を行うことが重要である。 さらに、森林の整備が造成を基軸とする段階から、育成・循環を基軸とする段階 を迎えている現状にあっては、育成単層林における間伐はもとより、育成複層林へ の誘導には抜き伐りが不可欠であることから、森林計画制度の運用等を通じて適切 な伐採及び造林を確保することが課題である。 ② 森林の区分に応じた路網整備と作業システムの導入 ア 林道、作業道等路網の整備 林道は、多面的機能を有する森林の適正な整備及び保全を図り、効率的かつ安定 的な林業経営を確立するために必要不可欠な施設である。主に地方公共団体の管理 、 、 、するものとして計画的に整備され 森林の総合利用の推進 山村の生活環境の整備 地域産業の振興等にとっても重要な役割を果たしている。また、作業道は、森林所 有者等による主体的な森林施業の実施に伴って整備されている。 森林の有する多面的な機能を持続的に発揮していくためには、適時適切に施業が 実施される必要があるが、一般に地形が急峻な我が国の森林において、将来にわた り担い手を確保し森林施業を推進するためには、高性能林業機械の導入等により労 働強度を軽減した合理的な省力作業の促進を図ることが課題である。 したがって、計画的かつ効率的な森林施業を確保するためには、森林所有者等に 、 、よる施業の集約化 団地化等を通じた高能率な作業システムの構築を図るとともに 自然条件や導入する作業システムに応じて、地方公共団体や森林所有者等の連携協 力の下、既設の市町村道等の道路も活用しつつ、林道と作業道等の適切な組み合わ せによる林内路網としての整備を図る必要がある。 このような観点から、労働力事情、林業技術体系等を踏まえて、望ましい森林施 18 業の展開に見合った合理的な森林の整備及び保全が行われるよう路網密度の目安を 示すと、育成単層林施業及び育成複層林施業の対象地にあっては、おおむね50m /haであり、天然生林施業の対象地にあっては、既設の林道等から必要に応じて作 業道等を整備することとする。この場合の路網整備の基礎となるおおむね40年後 における林道の整備目標を示すと次のとおりである。 現 状 整備目標 林 道 整 備 127千km 270千km (注)現状は平成11年度末現在 イ 森林の区分に応じた路網の整備 林内路網の整備において、林道については、それぞれの利用の形態や自然環境の 保全に配慮した路線配置、維持管理の合理性も踏まえた適切な工法等の採用及び開 設の期間やコストの縮減に努めることが必要であり、作業道については、できる限 り継続的な使用に耐えられるよう、地形条件に応じた適切な施工を図ることが必要 である。 森林の区分ごとの路網整備における課題は、次のとおりである。 (水土保全林) 水源かん養機能等の維持向上のため積極的な施業を実施する場合には、高密な路 網を整備し、一方では急傾斜地等崩壊の危険性が高い箇所を回避し整備することが 必要である。また、必要に応じて排水対策に資する施設やモノレールなどの活用を 図るとともに、運搬車両の通行に必要な最小限の幅員に抑制するなどの取組が重要 である。 (森林と人との共生林) 森林体験活動の場や健康づくりの場としての森林と人とのふれあいを重視する森 林において、森林へのアクセス等に必要な路網の整備を行う場合、林道については 利用者の利便性等の確保の観点に加え、作業道や歩道も含め景観や生態系の保全に 配慮した線形、構造及び施設を選択する必要がある。 19 (資源の循環利用林) 高性能林業機械による効率的な作業システムに対応するためには、作業道につい 、 。ても十分に機能する幅員を確保し 継続的に使用する路網を高密化する必要がある (森林区分を包括する林道) なお、森林の区分にかかわらず、公道と連絡することにより森林と山村及び都市 とを結ぶなど路網整備の骨格となる林道については、移動時間の短縮や相当量の一 般車両の通行に見合った規格及び構造とする必要がある。 ウ 地域の条件に応じた作業システムの導入 森林の有する多面的機能を持続的に発揮するためには、地域の条件に応じ て間伐の実施や複層林への誘導に必要な非皆伐作業等を効率的に実施すると ともに、環境負荷の低減に配慮した作業システムを導入することが重要であ る。 このため、こうした作業に対応した新たな高性能林業機械による作業シス テムの導入とその普及及び定着を推進するとともに、育林用や伐出用の高性 能林業機械を活用し現地の作業条件に応じた作業システムを効果的に展開で きる技術者の育成を行うことが課題である。また、一層の生産性の向上、労 働強度の軽減及び労働安全性の改善を図るため、先端技術を導入して地域の 作業条件によりきめ細かく対応できるような作業システムの構築に必要な機 械の開発改良を推進することが課題である。 ③ 広く国民に開かれた森林の整備及び利用の推進 森林の多面的機能の発揮に対する国民の関心や期待の高まりを背景に、野外教育や 環境教育の場、健康づくりや生きがいの場、芸術や文化活動の場、森林の整備活動へ の参加の場など、森林の保健・文化・教育的利用への要請は多様化している。特に、 体験活動等を通じてより積極的に森林とかかわる形での森林利用への期待が高まる傾 向にある。 20 こうした要請に応え、森林と人との共生林を中心に、地方公共団体や森林所有者等 、 、の理解と協力を得つつ 広く国民に開かれた森林を確保しその整備を進めるとともに 森林の整備、保全及び利用活動への国民の参画を促進していくことが必要である。こ の場合、国有林野の果たす役割は大きく、その活用が必要である。 このため、地域住民等の意向を踏まえた里山林等の整備を進めるとともに、教育、 福祉、保健等の分野と連携しつつ、森林環境教育や健康づくり等の森林の利用を推進 し、森林と人との豊かな関係の回復及び創出を図っていくことが課題である。 なお、これら森林の利用に資する施設については、利用者のニーズと自然条件等地 域特性を踏まえ、児童、高齢者、障害者等を含む幅広い利用に対応し、利便性や安全 性の確保を念頭においた構造、配置等となるよう十分配慮される必要がある。 また、漁業関係者による植樹活動など自ら森林の手入れを行うボランティア活動が 増加しており、こうした自発的な取組などの国民参加の森林づくりを推進することが 必要である。 ア 森林環境教育の推進 平成14年度からの完全学校週5日制や教育課程への「総合的な学習の時間」の 導入、さらには自然体験活動等の体験活動の充実が現在進められている教育改革の 重点事項となっていることとも相まって、森林・林業体験活動の受入に対する要請 。 、 、はさらに増加する傾向にある また 人と自然が共生する社会を実現するためには 森林との関係が希薄化しがちである都市住民とりわけ将来を担う子どもたちの森林 体験が重要である。 このため、様々な体験活動を通じた森林環境教育の機会を子どもたちをはじめ広 く国民に提供することが必要であり、体験学習等の受入が可能となるよう、体験の 場となる森林の整備に加え、指導者の確保をはじめとする受入体制の整備が課題で ある。 イ 健康づくり等の森林利用の推進 平成27年には国民の4人に1人が65歳以上と予測される中で、高齢者をはじ め国民の健康づくりや生涯学習に資する森林の整備と利用が課題である。 21 このため、幼児から高齢者に至るまで多様な利用者に対応するユニバーサルデザ インという考え方を踏まえ、バリアフリーに配慮した歩道等が整備された森林を確 保していく必要がある。 なお、森林浴等に必要な歩道の密度は、森林の状況や利用形態により異なるもの と考えられるが、快適さ、静粛さ、遮蔽効果及び既往の事例等を勘案し、平均的な 規模の森林では、おおむね50~100m/ha程度が目安と考えられる。 ④ 山村地域の活性化 山村地域は、国土面積の5割、全森林面積の6割を占めているが、そこに居住する 者は、全人口の4%に過ぎず高齢化も進行している。また、林業就業者の多くが居住 しており、林業生産活動や日常的な森林の見回り等の管理活動を通じて、森林の有す る多面的機能の発揮による安全で豊かな国土の形成に重要な役割を果たしている。 ア 山村地域の定住の促進 森林の有する多面的機能の維持増進を図るためには、森林所有者及び林業就業者 が山村地域で生活することが重要であり、木材、きのこ等の森林資源や山村特有の 魅力を活用した就業機会の増大、地元住民や都市からのUJIターン者(Jターン 、 、 、 。)とは 地方から都会へでた人が 故郷に近い地方都市で就職 定住することをいう のそれぞれのニーズに対応した生活環境の整備、拠点集落への重点化など位置や機 能に応じた集落の整備等を通じて山村地域の定住を促進し、その活性化を図ること が課題である。 イ 都市と山村の共生・対流の推進 、 、 、今後 人と自然との共生がますます重要性を増すものと見込まれる中で 山村は 都市住民と森林・林業等との絆を深め、多様なライフスタイルを実現する場として 重要な役割を担うことが期待される。また、都市との交流は山村の活性化に寄与す るものと期待される。 このため、情報通信基盤や交流基盤の整備、森林体験活動の指導者の育成等によ り多様な形態による都市住民等の受入体制を整備し、都市と山村の共生・対流を推 進することが課題である。 22 ⑤ 地球温暖化防止への貢献 ア 森林による二酸化炭素の吸収、貯蔵 、 、 、 、森林は 若齢の間は旺盛な成長を示し 大気中の二酸化炭素を吸収 貯蔵するが 成熟するとやがて成長量が減退して蓄積は横ばいとなることから、二酸化炭素の貯 蔵庫としての役割は維持するものの、吸収源としての機能は低下する。 このため、地球温暖化防止の観点からは、育成林にあっては、適切な時期に伐採 、 、 。し 木材として利用するとともに 適切な育成管理のための森林施業が必要である 天然生林は、貯蔵庫としての機能の観点から、その適切な保全管理が必要である。 イ 植林等の二酸化炭素吸収源対策の推進 耕作放棄地、荒廃地、原野等における植林を推進するとともに、必要な保育及び 間伐の的確な実施、病虫害等各種被害の適切な防除等の実施により、二酸化炭素の 吸収源及び貯蔵庫としての森林の機能の発揮を確保し、我が国が京都議定書におい て認められた吸収量を確保できるよう地球温暖化防止の観点からも貢献していくこ 。 、 、とが課題である さらに 都市空間をはじめ幅広く緑を確保することが必要であり 関係する取組との連携が重要である。 ウ 木材の有効利用の推進 間伐材を含め適正な森林の整備及び保全を通じて産出される木材を長期にわたり 利用することは、炭素の貯蔵庫としての役割を果たすこととなる。 また、木材は再生産可能で加工に要するエネルギーが少ないこと、林地残材や建 設発生木材等は木質バイオマスエネルギーとして化石燃料の使用を抑制できること から、その多角的利用は地球温暖化の防止に貢献するものである。 このため、森林の整備に伴い産出される木材の安定供給を図りつつ、地域材によ る住宅建築、公共施設への木材利用の促進、多段階における木材の有効利用の推進 及び利用の長期化を図り、木材の利用面からも地球温暖化防止に貢献することが課 題である。 23 ⑥ 森林関連データの整備 、 、持続可能な森林経営を一層推進し 森林の有する多面的機能の発揮を図るためには 森林の持続可能性を客観的に把握するための国際的な基準・指標等の動向も念頭に置 きつつ、稀少生物種や水、土壌、所有形態等を含む森林に関する自然的社会的経済的 データについて所要の整備を行うことが必要である。特に、地球温暖化防止の観点か ら、我が国の森林が吸収・貯蔵する二酸化炭素の量の把握は、重要である。 ア データ整備の課題 森林関連データの整備に当たっては、森林の資源や生態系についてのモニタリン グを行う調査の継続的な実施や調査内容の充実、衛星データ等も活用することので きる森林の地理情報システム(GIS)の整備、各種データの公開と信頼性の確保 が課題である。 イ 認証・ラベリングとの関連 持続可能な森林経営を支援する民間レベルを中心とした取組として、一定の基準 及び規格等を満たす森林経営が行われている森林又は当該森林経営を行う組織等を 認証するとともに、その森林から生産された木材・木材製品にラベルを貼付し、消 費者の選択的な購買につなげるいわゆる認証・ラベリングの導入が世界的にも増加 している。森林関連データについて所要の整備を図ることは、森林計画の的確な運 用に資するだけでなく、こうした認証・ラベリングへの対応やその影響の検証のた めにも重要である。 24 (5)森林の有する多面的機能の発揮に関する目標 森林の有する多面的機能の発揮に関する上記のような課題が解決された場合におい て、平成22年、平成32年に実現可能な森林の有する多面的機能の発揮に関する目 標は、次の第1表のとおりである。 第1表 森林の有する多面的機能の発揮に関する目標 (参考)目標とする森林の状態 指向する区 分 森林の状態平成12年 平成22年 平成32年 水土保全林 育成単層林 580 570 550 210 育成複層林 50 80 130 510 天 然 生 林 670 650 630 590 森林と人との共生林 育成単層林 160 150 140 20 育成複層林 10 30 40 180 天 然 生 林 380 370 360 350 資源の循環利用林 育成単層林 300 300 290 210 育成複層林 20 40 60 180 天 然 生 林 340 330 320 260 総森林面積(万ha) 育成単層林 1,030 1,020 970 440 育成複層林 90 140 230 870 天 然 生 林 1,390 1,350 1,310 1,200 合 計 2,510 2,510 2,510 2,510 総蓄積(百万m3) 3,930 4,410 4,730 5,080 ha当たり蓄積(m3) 156 176 188 202 総成長量(百万m3) 89 80 69 58 ha当たり成長量 m3 3.5 3.2 2.7 2.3( ) 25 注)1.水土保全林、森林と人との共生林及び資源の循環利用林の対象面積は、それぞれ、 1300万ha、550万ha、660万haとした。森林面積は10万ha単位であり、必ずし も内訳と計とは一致しない。 2.目標とする森林の状態の面積は、平成12年の森林の現況面積を基準としている。 3.育成単層林、育成複層林及び天然生林においては、以下の施業が実施される。 ① 育成単層林においては、森林を構成する林木の一定のまとまりを一度に全部伐採 し、 人為により単一の樹冠層を構成する森林として成立させ維持する施業(育成 ※1 単層林施業 。) ② 育成複層林においては、森林を構成する林木を 択伐等により部分的に伐採し、人為に ※2 より 複数の樹冠層を構成する森林(施業の関係上一時的に単層となる森林を含む )と ※3 。 して成立させ維持していく施業(育成複層林施業 。) ③ 天然生林においては 主として天然力を活用することにより成立させ維持する施業 天、 ( ※4 然生林施業 。この施業には、国土の保全、自然環境の保全、種の保存等のための禁伐等を) 含む。なお、天然生林は、未立木地、竹林等を含んでいる。 「 」 、 、 ( 、 )、 ※1 人為 とは 植栽 更新補助 天然下種更新のための地表のかきおこし 刈払い等 芽かき、下刈、除伐、間伐等の保育等の作業を総称したもの。 「択伐」とは、森林内の成熟木を数年から数十年ごとに計画的に繰り返し伐採(抜き ※2 伐り)すること。 「複数の樹冠層」は、林齢や樹種の違いから林木の高さが異なることにより生ずるも ※3 の。 「主として天然力を活用」は、自然に散布された種子が発芽して生育することを主体 ※4 とするもの。 26 3 林産物の供給及び利用に関する目標 (1)目標の意義 多面的機能発揮のための望ましい森林の整備が行われることを通じて、木材が供給 、 、 、 、される中で この木材に対する需要が確保され 適切に利用されることにより 伐採 植栽、保育等のサイクルが円滑に循環し、これによって林業の持続的かつ健全な発展 が図られ、森林の有する多面的機能の発揮が確保される。 また、供給及び利用の目標を策定し、我が国において適切かつ安定的な木材の供給 を図り、人と環境に優しい木材を最終的には熱源として利用するなど多段階にわたり 有効利用することは、望ましい森林整備の確保はもとより循環型社会の形成や持続可 能な社会の実現に資するとともに、ひいては地球規模での森林の保全につながるもの である。 したがって、望ましい森林の整備が行われた場合の木材の供給量や今後の需要動向 を見通しつつ木材利用の推進方向を明らかにした上で、製材用材等用途別の利用量を 目標として掲げ、林業、木材産業等の関係者が行う木材の生産、加工、流通等の事業 活動や一般消費者を含めた需要者にとっての木材の消費に関する指針とすることは重 要な意義を有するものである。 (2)目標の定め方 供給及び利用に関する目標については、森林の有する多面的機能の発揮や木材の供 給及び利用の確保のために関係者が取り組むべき課題が解決され 水土保全林 森、「 」、「 林と人との共生林」及び「資源の循環利用林」の区分にふさわしい森林施業が実施さ れた場合に供給される実現可能な木材の供給量を供給の目標として示すものである。 また、利用の目標については、森林の整備を進める中で供給される木材の適切な利 用を図るため、関係者が取り組むべき課題を明らかにして、これらの課題が解決され た場合において実現可能な利用量を示すものであり、製材用材、合板用材などの用途 別に目標として示すものである。 具体的な目標としては、森林の有する多面的機能の発揮に関する目標が10年後、 20年後を目途とすること、木材需要については経済動向等に大きく左右されるもの であり、長期にわたる需要を的確に見通すことが困難であることを踏まえ、10年後 27 における木材の供給量及びその用途別の利用量を目標として示すとともに、参考とし て20年後における木材の供給量を示すこととする。 (3)林産物の供給及び利用に関する課題 ① 林業の持続的かつ健全な発展に関する課題 ア 望ましい林業構造の確立 林業構造及び担い手については、小規模な林家を中心に経営意欲が低下してきて おり、林家等の森林所有者を主体にした林業生産活動を期待することが難しくなっ てきているとともに、施業の大部分は林業事業体によって実施されている現状にあ る。 今後の林業構造の方向については、意欲ある林家等の林業経営体に加え、相当規 模の事業量を確保しつつ効率的に林業生産活動に取り組む森林組合、素材生産業者 等の林業事業体、即ち、厳しい中でも「効率的かつ安定的な林業経営」を担い得る 者を育成、確保し、これらの者に施業や経営の集約化を図っていくことによって、 将来の林業生産の相当部分を担えるようにすることが課題である。このような望ま しい林業構造の確立を図っていくためには、自助努力を基本とし、次のような取組 が必要である。 (林家等の林業経営体) 林家等の林業経営体が 「効率的かつ安定的な林業経営」を担い得るようにする、 ためには、 ・相当規模の所有森林の確保又は施業や経営の受託による経営規模の拡大 ・多様な森林整備に対応した伐期の長期化による優良大径材の生産 ・高密度路網の整備 ・高性能林業機械を活用した効率的な素材生産 等の取組が必要である。 林家等の林業経営体の「効率的かつ安定的な林業経営」については、これらの取 組により、継続的な林業生産活動を行い、主たる従事者の生涯所得が基本的には地 28 域における他産業従事者とそん色のない水準を確保できる(林家が法人化した会社 にあっては、継続的な林業生産活動を行い、これに必要な適切な経費を支出した上 で利益を確保できる)林業経営とする必要がある。 (林業事業体) 森林組合、素材生産業者等の林業事業体が 「効率的かつ安定的な林業経営」を、 担い得るようにするためには、 ・積極的な施業や経営の受託等による事業規模の拡大 ・高性能林業機械の導入 ・現場従事者の雇用管理の改善による事業実施体制の整備 ・多様な森林整備に対応できる体制の確保 等の取組が必要である。 「 」 、 、林業事業体の 効率的かつ安定的な林業経営 については これらの取組により 生産性の高い林業生産活動を行い、これに必要な適切な経費を支出した上で利益を 確保できる林業経営とする必要がある。 イ 労働力の育成確保 林業労働力については、林業生産活動の停滞による事業量の減少とともに林業就 業者の減少及び高齢化が進行している。 他方、近年の自然志向の高まり等を背景に、林業への新規就業者が他産業からの 転職者を中心に増加傾向にあるが、その多くが林業未経験者である。 今後、林業の持続的かつ健全な発展を図り、森林の有する多面的な機能を持続的 に発揮していくためには、効率的かつ安定的な林業経営を担うべき人材及び従事者 の育成及び確保が課題である。 このため、高性能林業機械の導入による生産性の向上、森林の生態系の保全や機 能の発揮等に必要な知識や技術を備えた人材の育成及び確保や新規就業者の受け皿 となる林業事業体の労働環境の改善が必要である。 地方公共団体等においても、地域の実態に応じた担い手の育成及び確保の対策に 取り組むことが必要である。 29 ② 木材の供給及び利用の確保に関する課題 近年の景気の減退等による新設住宅着工戸数の減少等により木材需要が低迷してい る中で木材の安定的な供給及び利用を確保していくためには、新たな需要開拓等を含 む今後の木材需要全体を見通した上で、需要者ニーズにより一層応えた木材製品の供 給を図るとともに、木材の供給を担う木材産業についての課題を明らかにし、これに 取り組むことが必要である。 木材需要は、全体的にはほぼ横ばいかやや減少傾向で推移すると見通される中で、 国産材の供給量は望ましい森林施業の実施に伴い増加が見込まれるものの、外材は依 然として木材供給の大きなウエイトを占めるものと見込まれる。 ア 木材の主な用途別の需要の見通し (製材用材) 製材用材のうち、柱、板等の製材品の需要は、近年、横ばいか減少傾向で推移し ているが、比較的国産材が多く使われている分野である。製材需要の約7割は住宅 資材であるが、今後の新設住宅着工戸数については、少子高齢化や住宅ストックの 状況等から見て、これまでのような規模の着工は期待できない見通しである。こう した中で、製材用材の需要は現状より漸減する見込みである。 なお、近年、需要が急激に伸びている集成材は、輸入ラミナ(集成材を構成する 板材)を用いて製造されたものが大部分を占めているが、住宅資材をはじめとして 品質及び性能の明確な製品が求められていることから、今後も更に需要が伸びる見 込みである。 (パルプ・チップ用材) パルプ・チップ用材の需要の大宗を占める紙・板紙は、今後も堅調に推移するも 、 。 、のと見込まれるが 国産材の需要は減少傾向で推移してきた 製紙業界においては 原料調達のため海外での植林を進めるとともに、古紙の利用率の向上に取り組んで いる。また、パーティクルボードは一定の需要が見込まれるが、建設発生木材由来 の原料供給の伸びも見込まれ、国産材需要の拡大は見込み難い状況にある。 30 (合板用材) 合板は、住宅、土木工事、家具等に幅広く使用され、需要は比較的堅調に推移す る見込みである。 国内で生産される合板の原料のほとんどは外材であるが、これ らのうち、近年、北洋材による針葉樹合板が増加している。 (その他用材) 杭丸太等の用材、薪炭材、きのこ原木等その他用材については、従来より比較的 国産材の利用割合が高い分野であり、近年関心が高まっている木炭等への利用を中 心に今後とも一定の需要が期待される。 (林地残材・再利用材) 製材工場等において発生する端材、残材等は木材チップ、燃料等として利用され ている。間伐材を含む林地残材は相当量が利用されていない実態である。また、今 後、建設発生木材が増加する見込みである。 イ 木材利用推進の課題 (利用の意義についての国民の理解) 再生産可能で加工に要するエネルギーが少ないなど木材は人と環境に優しい素材 であること、木材の有効利用の促進が環境に負荷の少ない循環を基調とする社会経 済システムの実現につながること、その利用の確保が森林整備を通じ二酸化炭素の 吸収及び固定による地球の温暖化防止等の森林の多面的機能の発揮に資することな ど木材利用の意義について、国民の間で広く理解を得ることが必要である。 (利用の拡大と多角化) 木材利用推進の方向として、住宅分野、公共部門等への利用拡大のほか、木質資 源の利用の多角化が必要である。 、 、 、・ 住宅については 木材供給者と大工 工務店等との連携を強化するとともに 新たな需要の喚起のため、地域材を利用したリフォーム部材や非木質住宅向け 31 の内装材の開発普及、長期耐用住宅への太い柱の利用促進等による単位面積当 たりの使用量の拡大等が課題である。 ・ 公共事業での木材利用の推進とともに、民間への波及効果や展示効果の大き い地域のシンボル的な公共施設における木材利用を関係府省、地方公共団体等 が連携して促進することが課題である。 ・ 木質資源の利用の多角化については、木質バイオマスを大規模木材加工団地 における木材乾燥及び動力のエネルギー源のほか、循環型社会のモデルとして の農山村の地域エネルギー等としてその利用拡大を推進すること、リサイクル 可能な木質新素材の開発が課題である。 ウ 木材産業の課題 、 、上述のような木材需要の見通しを踏まえ 国産材の生産・加工・流通については 自助努力を基本として、以下のような低コスト化、製品の品質向上、ロットの拡大 等を進め、木材産業の構造改革を図ることが必要である。なお、情報技術(IT) を活用し、原木から製品に至るまで、物流の短絡化、効率化等を推進する必要があ る。部門ごとの主な課題は次のとおりである。 (素材生産) 素材生産事業体は小規模なものが多く、機械化が進んでいないため、生産性が低 く、生産コストも高い実態にある。コストの低減を図るためには、森林施業の団地 化、受委託を通じたロットの拡大並びに高性能林業機械の導入及び活用が課題であ る。 また、今後、相当の事業規模を確保し、生産性の向上やコストの低減が図られる ような事業体の育成が必要であり、そのような事業体が林業生産活動の相当程度を 担う構造を構築することが課題である。 (原木流通) 原木の約5割が原木市場を経由しているが、原木市場は規模が小さく、機械化が 進んでいないものが多い実態にある。 今後、流通コストの削減を図るためには、加工の大規模化、製材加工等の効率化 32 に対応した原木の集荷及び選別の機能の向上や、工場に隣接したストックヤードの 整備並びに製材工場等と素材生産業者等の連携による物流の効率化を進めることが 課題である。 (製材加工) 製材工場は約1万2千工場存在するが、国産材を扱う製材工場には小規模なもの が多いため、生産コストが高く、需要が高まっている乾燥材の生産も少ない実態に ある。 今後、製材需要の大宗をなす住宅資材等の分野で国産材の需要を拡大していくた めには、住宅メーカー、大工、工務店等需要者のニーズに対応して、品質、性能の 優れた乾燥材等についてロットとしてのまとまりを確保して安定的な供給を推進す る必要がある。 その場合、まとまった木材生産が期待できる地域にあっては、大手住宅メーカー を含めた住宅生産者への資材供給を念頭において、例えば大規模工場を核とした木 材加工団地を形成し、コスト低減、品質及び性能の明確な製品の供給並びにロット の拡大を図ることが課題である。なお、その際には原木の確保で競合するおそれの ある生産性の低い設備の廃棄等を併せて行うなど地域全体で一体的に推進する必要 がある。 また、木材生産量の多寡にかかわらず、製材業等木材関係事業者が住宅生産者と 連携を図ることは重要である。特に量的なまとまりが小さい場合においては、特色 ある地域材の安定的な供給を確保しつつ、木材関係事業者の主導のもとに、森林所 有者から住宅生産者までの関係者が連携し、消費者ニーズに対応した家づくりの体 制を構築することが課題である。 (集成材製造) 、 、 、集成材については 国産材は 総じて集成材の材料としては原木価格が高いこと 品質のばらつき等により歩留まりが低いこと等により、利用は少ない実態にある。 今後、例えば木材加工の団地的取組を活用しつつ、国産材によるラミナ製造段階 までのコスト削減のための取組を進めるとともに、製品ロットの拡大に取り組むこ とが課題である。 33 (合板製造) 合板については、国産材は、合板用の材料としては原木価格が高いこと、原料の ロットがまとまらないこと等により、利用は少ない実態にある。 今後、例えば木材加工の団地的取組を活用しつつ、短尺材及び曲り材の活用、国 、 、 、産材による単板製造までの段階のコスト削減 国産材製品の高付加価値化 差別化 製品ロットの拡大等に取り組むことが課題である。 (製品流通) プレカット加工の進展等に対応して、製品流通の合理化を図るためには、プレカ ット工場を物流の拠点と位置付け、構造材のみならずその他の資材やパネルも含め たプレカット機能の強化、物流コストの削減、製材工場や住宅生産者等との連携を 図ることが必要である。 このため、加工段階の規模拡大、流通の広域化に対応して、プレカット工場への 直送化、情報技術(IT)を活用することによる物流の短絡化、効率化、需要に対 応した供給ロットの確保等を図り、規格製品の低コスト安定供給を推進することが 課題である。 34 産物の供給及び利用に関する目標(4)林 供給及び利用の確保に関する上記のような課題が解決された場合において、 平成22年に実現可能な木材の供給量及び用途別の利用量の目標は、次の第2表及び 第3表のとおりである。 第2表 木材の供給目標 (単位:百万m ) 3 (実 績) (目 標) (参 考) 平成32年平成11年 平成22年 33木 材 供 給 量 20 25 15水土保全林 12 参 4考 森林と人との共生林 4 内 14訳 資源の循環利用林 9 第3表 用途別の利用の目標 (単位:百万m ) 3 利 用 量 総 需 要 量 用 途 区 分 (実 績) (目 標) (実 績) (見通し) 平成11年 平成22年 平成11年 平成22年 製材用材 13 18 42 41 パルプ・チップ用材 5 5 41 41 合板用材 0 1 14 15 その他 1 1 3 3 合 計 20 25 100 100 注 「その他」とは、杭丸太、しいたけ原木、薪炭用材等である。) 35 第3 森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策 1 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策 森林の有する多面的機能を将来にわたって持続的に発揮させていくため、森林の整備 の推進、森林の保全の確保、技術の開発及び普及、国民の自発的な森林の整備及び保全 に関する活動の促進、都市と山村との共生・対流等に関する施策を講ずる。 なお、流域保全の観点から河川等国土保全に関する施策と、自然環境の保全の観点か ら自然公園等環境保全に関する施策との連携を図る。 (1)森林の整備の推進 国民の要請に応え、森林の有する多面的機能を将来にわたり持続的に発揮できるよ う、地域の特性に応じた森林施業の実施に努めるとともに、これらの森林施業を効率 的に行うための林内路網の整備等を通じて、森林の整備を計画的に推進する。 ① 重視すべき機能に応じた森林施業の計画的な推進 (重視すべき機能に応じた森林の区分の明確化) 重視すべき機能に応じて、森林施業が効率的かつ効果的に実施されるよう、森 林計画制度に基づく諸計画において森林整備の推進方向等を国民に分かりやすく 明示する。また、市町村段階の森林計画である市町村森林整備計画において、地 域の特性を踏まえつつ、重視すべき機能に応じた森林の区分とそれぞれの区分ご との望ましい森林施業を明らかにする。さらに、森林所有者等が森林施業を計画 的に推進できるよう、新たな森林施業計画制度についてその普及及び定着に努め る。 (森林整備の事業の着実な推進) 森林所有者が重視すべき機能に応じた適切な森林施業を推進することができる よう、造林、保育、林道の整備等の森林整備の事業について、森林の区分等に応 じた事業展開を図り、事業の目的を国民に分かりやすく提示した上で、計画的に 推進する。また、受託等により森林所有者に代わって森林施業計画の認定を受け た者による森林施業の推進に努める。 36 多面的機能を十分に発揮することができる健全な森林を育成するため、計画的 かつ効率的な間伐の推進を図ることとし、間伐の共同実施、間伐材の利用促進等 の総合的な取組を展開する。また、育成複層林の造成等を進める観点から、抜き 伐りを繰り返しつつ、徐々に更新を行う長期育成循環施業の導入を図るなど計画 的かつ適切な伐採及び造林の推進に努める。 (林内路網の整備) 森林施業の計画的な推進に不可欠な林内路網については、施業の集団化、団地 化等を通じた高能率な作業システムの構築を図るとともに、自然条件や導入する システムに応じて、林道と作業道等の適切な組み合わせによる整備を推進する。 このうち、林道については、林道の種類による役割分担を明確化した上で、その 規格や構造の見直しを行い、森林や地形の状況等に応じた弾力的な整備を推進す る。 また、小動物に配慮した側溝や法面に鳥類の餌木となる植生を導入するなど自 然環境保全のための林道技術の確立を図り、自然環境に優しい「エコリンドー」 の整備を推進する。 (優良種苗の確保) 森林に対する要請の多様化に応じた森林の整備に対応して、広葉樹を含めた多 様な優良種苗の確保を図るため、林木育種、採取源の確保、コンテナ苗木生産技 術の向上等の生産対策及び流通対策を実施する。 (花粉症対策の推進) 都市部を中心に社会的に大きな問題となっている花粉症問題に対処するため に、スギ等の花粉の発生抑制、花粉生産量の予測等発生源における花粉症対策を 推進する。 (森林に関する情報の整備) 生物多様性も含めた森林資源のモニタリングを行うとともに、森林に関する情 報を的確かつ効果的に把握、分析し、森林計画等に適切に反映できる地理情報シ ステム(GIS)等を活用した情報管理体制の整備を図る。また、持続可能な森 林経営の基準、指標に関する国際的な取組や民間における森林認証への取組の進 展状況も踏まえつつ、森林の有する多面的機能の持続的発揮に資する森林経営に 対する森林所有者や地域住民等の理解を高める。 37 ② 森林施業の適切な実施に不可欠な地域における活動を確保するための支援 適切な森林整備を通じて森林の有する多面的機能の発揮を図る観点から、森林所 有者等による計画的かつ一体的な森林施業が適時適切に行われるよう、その実施に 不可欠な森林の現況の調査等の地域活動を確保するための支援措置を実施する。 ③ 公的な関与による森林の整備 良質な水、山地災害等に対し安全かつ安心な生活を確保するため、水源のかん養 の機能等の公益的機能の発揮に対する要請の高い森林のうち、森林所有者等が自助 努力を行っても林業生産活動のみでは適正な整備が進み難い森林について、その適 正な整備が必要な場合には、治山事業や緑資源公団による対応により必要な整備を 行うほか、森林所有者等からの施業や経営の受託によるものを含め森林整備法人等 が行う森林の整備を推進する。 ④ 社会的コスト負担 水源の森づくりなど森林整備のための社会的コスト負担としては、一般財源によ る対応のほか、国及び地方における環境問題に対する税・課徴金等の活用、上下流 間の協力による基金の造成や分収林契約、森林空間利用等への利用料金の徴収、ボ ランティア活動による対応など様々なものがあるが、今後、森林の有する多面的機 能が持続的に発揮されるよう、社会経済情勢の変化等も踏まえ、国民の理解を得つ つ、地域の状況にも対応して的確に選択していくことについて検討を行う。 ⑤ 地球温暖化防止への貢献 二酸化炭素の吸収源としての森林の役割を適正に評価するとともに、京都議定書 において認められた吸収量を確保できるよう、適切な管理、伐採等による健全な森 林の育成、耕作放棄地、荒廃地等への植林の推進、森林の果たす役割についての国 民の理解の醸成等を図る。 また、二酸化炭素の貯蔵庫としての木材の利用の推進、バイオマスエネルギーと しての活用等により地球温暖化防止に貢献する。 38 (2)森林の保全の確保 国土の保全、水源のかん養等を中心に森林の有する多面的機能が十全に発揮される よう、森林の保全を図り、緑の再生、創出を推進する。 ① 森林の保全のために必要な規制 (保安林の機能の保全) 特に公益的機能の発揮が要請される森林については、土地の形質の変更や無秩序 、 、な伐採等の行為を規制するため 保安林としての指定を計画的に推進するとともに 森林に対する国民のニーズの変化を踏まえつつ、保安林内における伐採の限度及び 植栽義務の基準の見直しを行い、その基準に基づいて保安林の指定施業要件を見直 すことにより、保安林の機能の十分な保全を図る。 (林地開発許可制度等の活用) 保安林等以外の民有林については、1haを超える開発行為に対する許可制度を通 じ、森林の土地の適正な利用を確保する。さらに、優れた自然の風景地を構成する 森林や自然環境を保全することが特に必要な森林等については、自然公園法や自然 環境保全法に基づく制度等も活用する。 ② 山地災害等の防止と復旧 (災害に強い安全な国土づくり) 豪雨、地震、火山噴火、流木等多様な現象による山地災害を防止し、また、これ による被害を最小限にとどめるとともに、地域の安全性の向上に資するため、山地 災害の発生の危険性が高く、集落、市街地及び重要なライフラインに近接する地域 の森林等を適正に保全するきめ細かな治山対策を推進する。 (水源地域の機能強化) 良質な水資源の安定的な供給と国土の保全に資するため、重要な水源地域におけ る森林について、土砂流出防止機能の向上や良好な森林水環境の形成を推進する。 ③ 森林病害虫等の被害の防止 森林の多面的機能の低下や森林所有者の経営意欲の喪失につながる森林被害につ いては、松くい虫等の森林病害虫の的確な防除、野生鳥獣の生息環境となる広葉樹 39 林の造成を図るなど共存にも配慮した対策、林野火災の予防等により、森林の保全 を適切に実施する。 (3)技術の開発及び普及 森林の多面的機能の発揮、林業の持続的かつ健全な発展並びに林産物の供給及び利 用の確保を図るため、森林、林業及び木材産業分野全般にわたる研究、技術開発及び その成果の効果的な普及の推進を図ることが必要である。このため、研究及び技術開 発の目標の明確化、各種試験研究機関の大学等との連携の強化、地域の特性に応じた 林業普及指導事業の推進等の施策を講ずる。 ① 研究及び技術開発の目標の明確化並びに連携の強化 平成13年に策定された「森林・林業・木材産業分野の研究・技術開発戦略 、」 「林木育種戦略」等で明確にされた課題及び目標の下で、国、独立行政法人及び都 、 、 、道府県の試験研究機関が大学 学術団体 民間等との産官学連携の強化を図りつつ 研究及び技術開発を効率的かつ効果的に推進する。研究成果については、達成目標 に照らして評価を行う。 ② 地域の特性に応じた林業普及指導事業の推進 研究・技術開発の成果の移転を行い、地域ぐるみの森林整備と林業生産活動の推 、 、進のため 地域におけるまとめ役となる指導的林業者等を対象とした重点的な普及 自然条件や個々の林業経営の実態等に即したきめ細かな普及等に努め、地域の特性 に応じた林業普及指導事業を効率的かつ効果的に推進する。 (4)山村地域における定住の促進 山村地域は、その大半を占める森林の管理や林業生産活動を通じて、林産物等の安 定的な供給、国土の保全、きれいな水や空気の提供、美しい自然景観の保全等安全で 豊かな国民生活を支える重要な存在である。 森林の適正な整備及び保全を図るためには、その担い手たる森林所有者等又は林業 労働従事者が森林の所在する山村地域に生活し、日常的に森林に接することにより適 時適切に森林の整備及び保全を行っていくことが必要である。このため、これらの者 40 が山村地域に定住できるよう、拠点となる集落への重点化など集落の位置及び機能を 踏まえ、就業機会の増大や生活環境の整備等の定住条件整備のための施策を講ずる。 ① 就業機会の増大 山村における基幹的な産業である林業及び木材産業の振興を図る。特に、山村や 林家の貴重な収入源である特用林産物等の生産及び販売について経営体質の強化を 図りつつ振興するとともに、山村の有するきれいな水や空気、美しい自然景観及び 木質バイオマス資源を活かした産業の育成により、山村地域における就業機会の増 大を図る。 また、林業、木材産業の振興に不可欠であり、森林の総合的利用の推進等にとっ ても重要な役割を果たしている林道の開設、舗装等を推進する。 ② 生活環境の整備 居住地周辺の森林整備や、用排水施設等により、山村の生活環境の整備を進め、 山村の若者やUJIターン者等の定住の促進を図る。 (5)国民等の自発的な活動の促進 国民、事業者又はこれらが組織する団体の間では、都市住民や漁業関係者による植 林活動にみられるように、自ら緑化活動や造林・保育・伐採といった森林の整備及び 保全に関する活動に参加したいという機運が高まっている。森林は、美しい国づくり の基礎となる国民の共有財産であり、これらのボランティア活動の促進を通じ森林の 整備、保全は社会全体で支えるという国民意識の醸成に資する。 このため、全国植樹祭、緑の募金等の国土緑化運動、森と湖に親しむ旬間及び上下 流連携による緑化運動の展開等により普及啓発を図るとともに、森林ボランティア活 動について森林所有者等からの受入れに関する情報の提供等による条件整備、青少年 の活動の促進による裾野の拡大、技術や安全に関する研修等を通じて国民参加の森林 づくり(いわゆるGKO:グリーン・キーピング・オペレーション)の推進に寄与す る。 41 (6)都市と山村の交流等 (森林環境教育等の推進) 森林での様々な体験を通じた森林環境教育、森林整備への参加、健康づくりや生き がいの場、さらには芸術や文化活動の場としての利用など、体験を通じて森林と積極 的に関わる形での森林の利用への国民の期待の高まりに適切に対応することにより、 健康的でゆとりある国民生活の実現に資するとともに、社会全体で森林整備を進める との機運を醸成する。 このため、森林と人との共生林を中心に、児童、高齢者、障害者等を含む幅広い利 用に配慮しつつ交流環境を整えるとともに、教育、福祉、保健等の分野の施策や森林 ボランティア活動と連携を図りつつ、森林環境教育や山村生活体験など様々な体験活 動の推進に必要な人材育成、プログラム開発、情報提供、子どもたちが体験活動を行 う機会の提供等を推進する。 (里山林等の保全・整備・利用の推進) 身近な里山林や都市近郊林が人々に継続的に利用され、維持管理されるよう、森林 所有者と都市や地域の住民の連携及び協力の下で、整備及び保全活動と利用活動を一 体的に推進できる条件を整備する。 (森林に関するPRの推進) 森林の有する多面的機能や森林の現況等に関する情報を、インターネットその他各 種メディアを通じて広くPRに努め、国民の森林及び林業に対する理解と関心を深め る。 (7)国際的な協調及び貢献 森林は、地球温暖化等地球規模の問題と密接に関係しており、国際的な協調の下で 森林の有する多面的機能の持続的発揮に向けた取組を推進することが重要である。し たがって、その取組のための国際的な連携に努めるとともに、世界的に有数の木材輸 、 、入国であり豊かな森林を有する先進国として 我が国の有する知識及び経験をもって 開発途上地域における森林の整備等に対する積極的な協力の推進に努める。 このため、持続可能な森林経営を把握するための基準の適用に向けた取組や国連等 における政策対話等に積極的に参画するとともに、開発途上地域の森林の整備及び保 全等に関する技術協力及び資金協力並びに国際機関を通じた協力等の推進に努める。 42 2 林業の持続的かつ健全な発展に関する施策 地域の森林の適正な整備及び保全に重要な役割を担う林業の持続的かつ健全な発展を 図るためには、効率的かつ安定的な林業経営を育成し、これらの林業経営が林業生産の 相当部分を担う林業構造を確立することが必要である。 このため、このような林業経営及び林業構造の姿を明確にしつつ、望ましい林業構造 の確立、人材の育成及び確保、林業労働に従事する者の福祉の向上、林業生産組織の活 動の促進、林業災害による損失の補てん等の施策を講ずる。 (1)望ましい林業構造の確立 (林業経営の規模の拡大等) 効率的かつ安定的な林業経営を育成するため、林業経営基盤の強化等の促進のため の資金の融通等に関する暫定措置法に基づく林業経営改善計画の認定の考え方の見直 しを行い、主として所有する森林を対象に経営を行う林家、主として受託によって林 業生産活動を行う森林組合、素材生産業者等の林業事業体などの林業経営の形態及び 地域の特性の別に応じ、同法に基づく金融・税制上の措置等の活用を重点的に図る。 また、林業の持続的かつ健全な発展等を推進する観点から、林業構造改善事業を見直 し、効率的かつ安定的な林業経営の育成を促進する。 効率的かつ安定的な林業経営を担い得る者について、都道府県知事による経営意欲の 低下した森林所有者等の所有権の移転や森林施業の委託等のあっせんを通じて、林業 経営の規模の拡大と森林の施業や経営の集約化を推進する。 (生産方式、経営の合理化等) 森林施業技術や経営方法等に関する研修、伐期の長期化等に要する資金の融通等によ る生産方式の合理化、林業部門と他部門の財務管理の分離等経営の合理化、作業現場 の地形に応じて間伐や育成複層林施業を効率的に実施し得る高性能林業機械の開発、 改良及び普及を推進する。 なお、林業経営の円滑な承継と安定を通じて森林の適正な整備及び保全を推進するた めの関連施策のあり方について検討を行う。 43 (2)人材の育成及び確保 (教育、普及等の充実) 効率的かつ安定的な林業経営を担うべき人材の育成及び確保については、林業普及 指導事業を通じ、地域におけるまとめ役となる森林・林業に関する幅広い知識と高度 な技術、優れた経営感覚を身につけた指導的林業者の育成及び確保を図る。また、次 世代の林業を担う青少年等に対し森林及び林業の体験学習等を推進する。 また、林業改善資金等を活用した事業により、林業従事者の林業技術及び経営管理 能力の向上を図るための施策を推進する。 (女性の参画及び高齢林業者の活動の推進) 女性に対し林業生産に必要な知識や技術を付与する研修の実施等を通じた女性の林 業経営への参画の促進、高齢林業者の有する豊かな経験、知識及び技術の次世代の林 業従事者への伝承の支援を行うなど、女性及び高齢者の活動の促進のための施策を講 ずる。 (3)林業労働に関する施策 林業生産活動の停滞とともに、林業就業者の減少及び高齢化が進行しているところ であり、適正な森林整備を進めていくためには、林業労働につき、幅広い人材の確保 と育成、定着のための労働環境等の改善が必要である。 このため、都市部からの就業を含めた幅広い新規就業者の育成及び確保、事業主の 雇用管理の改善、労働安全衛生の向上等を通じた就業環境の整備等の施策を講ずる。 ① 就業の促進 UJIターン希望者など他産業からの新規参入を含む幅広い人材の確保を図るた め、就業情報ネットワークの整備、作業技術や森林施業に関する幅広い知識等の修 得のための研修を実施する。 また、新規就業者の円滑な就業及び研修の参加を促進するため、林業労働力確保 支援センターによる林業就業促進資金の融資や都道府県の森林整備担い手基金等に よる支援を行う。 44 ② 雇用管理の改善 労働環境の改善のため高性能林業機械や休憩施設の整備、経営者等への雇用管理 研修等の実施や林業事業体の優良事例等の情報の提供、雇用の長期化や社会保険等 への加入促進のための普及及び啓発等を推進する。 ③ 労働安全衛生の向上 安全衛生指導員の養成、災害の発生頻度が特に高い中小規模の事業体を中心とし た安全管理手法等の指導、高齢者や林業経験のない新規就業者に重点をおいた安全 、 、 、講習や現地実習の強化を図るとともに 労働災害防止 機械及び器具等の開発改良 高性能林業機械の導入による作業システムの改善等を推進する。 (4)林業生産組織の活動の促進 地域の林業における効率的な生産の確保を図るとともに、経営意欲の低下した森林 所有者の森林の施業等の集約化を通じた地域の森林の適正な整備及び保全の推進に資 するため、森林組合、素材生産業者等委託を受けて森林の施業又は経営を行う組織等 の活動の促進を図る。 (5)林業災害による損失の補てん 災害によって林業の再生産が阻害されることを防止するとともに、林業経営の安定 を図るため、森林国営保険の適切な運用を通じた災害による損失の合理的な補てん等 の施策を講ずる。 3 林産物の供給及び利用の確保に関する施策 林業の持続的かつ健全な発展並びにこれを通じた森林の適正な整備及び保全を図るた めには、林業を通じ生産された林産物が適切に供給され、利用されることが不可欠であ る。 このため、林産物の供給を担う木材産業等の健全な発展及び林産物の利用の促進のた めの施策を講ずるほか、林産物の適正な輸入のための措置を講ずる。 45 (1)木材産業等の健全な発展 木材産業等が林産物の供給を通じ、林業の持続的かつ健全な発展並びに森林の適正 な整備及び保全に重要な役割を果たすことにかんがみ、その健全な発展を図るため、 事業基盤の強化、林業との連携の推進、流通及び加工の合理化等の施策を講ずる。 ① 木材産業等の事業基盤の強化 素材生産から加工流通まで一貫して低コストで安定した木材を供給できるよう、 製材工場の規模拡大や過剰設備の廃棄などによる木材供給体制の再編整備、乾燥材 や集成材等の品質及び性能が明確で安定した木材の供給能力の向上、技術開発等を 進め、その事業基盤の強化を図る。 ② 木材産業等と林業との連携の推進 木材産業等と林業との連携により、原木の安定供給の確保、山元からの直送化等 による林産物の流通コストの削減を推進し、住宅等の需要者の高度化、多様化した ニーズに応え得る体制の構築を図る。 ③ 流通及び加工の合理化 林産物の流通及び加工の合理化を図るため、木材関連産業の団地的取組、地域内 の連携等によるロットの拡大、高能率機械の導入等を進めるとともに、農林物資の 規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)に基づきニーズに応じた林 産物の規格の見直し及びその普及など品質及び性能の明確な製品供給の推進を図 る。また、情報技術(IT)を活用して、木材取引の電子化の推進等により流通の 合理化や需要者、生産者双方の情報交換を推進するなど木材産業の情報化を推進す る。 (2)林産物の利用の促進 林産物の適切な利用の促進を図り、林業の持続的かつ健全な発展並びに森林の適正 な整備及び保全に資するため、林産物の利用の意義に関する国民への知識の普及及び 情報の提供、林産物の新規需要の開拓、建物及び工作物における木材の使用の促進等 の施策を講ずる。 46 ① 林産物の利用の意義に関する国民への知識の普及及び情報の提供 人と環境に優しいという木材の特性や、地域材を利用することが、地域の林業及 び木材産業の活性化のみならず、地域の森林の多面的機能の発揮にも貢献するとい う木材利用の意義について国民の理解を高めるとともに、消費者が木材及び木製品 を選択するために必要な品質及び性能等の情報などを、木材のラベリングに対する 民間の取組等を踏まえつつ、国民に広く提供する。 また、きのこなどが健康の維持に有用な成分を多く含んでいること、これらの摂 取の意義など、特用林産物に関する情報を積極的に提供する。 ② 林産物の新規需要の開拓 林地残材(間伐材・被害木を含む 、製材工場残材、建設発生木材等の木質資。) 源の利用促進と再資源化を進めるため、木材のガス化、液化等をはじめとする燃料 としてのバイオマスエネルギーの利用体制の整備、リサイクル可能な木質新素材の 開発や、有機農産物の生産のための土壌改良資材、水質改善のための水質浄化材、 居住性向上のための調湿材等の新用途への木炭の利用の拡大を進めるほか、林産物 の新たな利用方法についての技術開発を推進する。 ③ 建物及び工作物における木材の使用の促進 地域の気候や風土を踏まえた住宅生産者と林業及び木材関係業者との連携の強化 による地域材を利用した家づくり、今後の住宅需要を踏まえた長期耐用住宅や住宅 のリフォーム等への地域材利用等により、住宅への木材の利用を促進する。 また、小中学校や幼稚園、保育所、郵便局、介護施設等の地域のシンボルとなる 、 、公共施設に木材を利用することは 利用者に対して快適な環境を提供するとともに 木材の優れた特性に対する理解を深める上で効果的である。また、施設の整備を通 じて地域でのノウハウの蓄積が図られることからも、民間部門への波及効果が期待 される。このため、政府部内はもとより、地方公共団体との連携の下、公共施設に おける木材の利用を促進する。 このほか、公共土木工事への木材の利用を促進するため、性能や施工性に優れた 土木用資材の開発、施工歩掛等の木材利用に必要な情報の提供等を推進し、政府及 び地方公共団体が木材を利用しやすい環境を整備する。 47 (3)林産物の輸入に関する措置 世界有数の輸入国として、各国の森林の有する多面的機能の持続的な発揮を損なう ことがないよう適正な輸入が確保されることを旨として、二国間、多国間の国際的な 枠組みの中で、輸出国との関係の維持、外国との会合の場等における情報収集、情報 交換の推進、海外における生産供給動向等の情報収集、分析の充実等の国際的連携を 図っていく。 なお、国際的に問題となっている違法伐採について、違法に伐採された木材は使用 すべきでないとの考え方に基づき、違法伐採に対処する国際的に理解の得られる最善 の方法について検討する。また、海外での違法伐採の現況把握とともに、国内関係者 の間での違法伐採問題への理解を深めることに努める。 さらに、林産物の輸入によってこれと競争関係にある林産物の生産に重大な支障を 与え、又は与えるおそれがある場合において、緊急に必要があるときは、関税率の調 整、輸入の制限その他必要な施策を講ずる。 4 国有林野の管理及び経営の事業 国有林野は国土面積の約2割、森林面積の約3割を占め、急峻な奥地脊梁山地や水源 地域に広く分布している。また、貴重な野生動植物が生息・生育する森林や原生的な天 然生林が多く所在する。 森林に対する国民の期待が、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全等の森林の 有する公益的機能の発揮を中心に一層高まる中で、基本法に掲げる基本理念の実現を図 るため、特に国民共通の財産である国有林野については、公益的機能の維持増進を図る とともに、あわせて、林産物を持続的かつ計画的に供給し、国有林野の活用によりその 所在する地域における産業の振興又は住民の福祉の向上に寄与することを使命として、 国有林野を一体のものとして適切かつ効率的に管理経営する。 また、これらの使命を十全に果たすため、国有林野の管理及び経営の事業(以下「国 有林野事業」という )について、その財政の健全性を回復し、国有林野を将来にわた。 って適切かつ効率的に管理経営する体制を確立するなど国有林野事業の改革を確実かつ 円滑に遂行する。 48 このような考え方の下で、国有林野については、既に重視すべき機能に応じて「水土 保全林 「森林と人との共生林」及び「資源の循環利用林」に区分し、区分に応じた」、 適切な森林施業を実施しているところであり、今後とも、民有林の森林施業との連携に 配慮しつつ一層推進する。国有林野の有する公益的機能の重要性にかんがみ、林産物の 供給に重点を置いたものから公益的機能の維持増進を旨とするものに転換するとの基本 方針の下で、伐採年齢の長期化、複層状態の森林への誘導等の森林施業を積極的に推進 する。また、原生的な天然生林や貴重な野生動植物が生息・生育する森林等の優れた自 然環境を有する森林については、保護林として設定するなど適切な維持及び保存を推進 する。 国民の期待や要請に適切に対応し、名実ともに「国民の森林」としていくため、国民 共通の財産である国有林野を「国民の参加」により管理経営する。このような考え方の 下で、広く国民の意見を聴いて、国有林野の管理経営に関する計画を策定し、公表する とともに、公衆の保健のための利用、自主的な森林整備のための利用等を通じて、国有 林野を国民の利用に積極的に提供する。さらに、流域を単位として、国有林野事業と民 有林施策が一体となって地域の森林整備や林業及び木材産業の振興を図るため、民有林 施策との連携を推進する。 5 団体の再編整備に関する施策 基本法の基本理念の実現に資することができるよう、森林及び林業に関する団体の効 率的な再編整備につき必要な施策を講ずる。 なお、これらの団体に関連する森林及び林業に関する諸制度のあり方の見直しを行う 場合には、これらの団体の体制についても、その見直しを行う。 (1)森林組合系統組織 森林組合系統組織が、森林の有する多面的機能の発揮、林業の持続的かつ健全な発 展並びに林産物の供給及び利用の確保という基本法の基本理念を的確かつ効率的に実 現できるよう、経営基盤の強化や組織運営の透明性の確保等の体制の整備を自主的に 行うのに必要な施策を推進する。 49 (2)団体間の連携の強化 地域の実情に応じ、森林組合と農業協同組合や漁業協同組合等との団体間の連携に ついての条件整備を進める。 第4 森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 1 施策の評価と見直し この計画に従って各施策を実施するに当たっては、必要に応じ学識経験を有する者の 知見を活用することも含め、実施主体が適切な時期に施策の評価を行い、その結果を踏 まえ、必要に応じ施策内容等の見直しを行うものとする。 2 財政措置の効率的かつ重点的な運用 この計画に従って各施策を実施するに当たっては、厳しい財政事情の下で限られた予 算を最大限有効に活用する観点から、財政措置の効率的かつ重点的な運用に努めるもの とする。また、類似の事業について重複投資を行わないよう、関係省庁が連携して計画 的に事業を実施する。 3 情報の公開と国民の意見の反映 この計画に従って各施策を実施するに当たっては、施策の実施における透明性の確保 の観点から、情報の公開及び国民の意見の聴取に努めるほか、施策の目的、内容等につ いて国民の理解が得られるよう、広報活動の充実等に努めるものとする。 4 国と地方の役割分担及び多様な主体の参加と連携 この計画に従って各施策を実施するに当たり、地方公共団体は、国との適切な役割分 担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策 定し、実施するものとする。 50 特に森林整備の分野では、森林所有者等や公的主体による整備のほか、地域住民、N PO(非営利組織 、民間企業等の多様な主体の参加と連携の促進を図るものとする。) 5 国際規律との調和等 この計画に従って各施策を実施するに当たっては、国際的な規律と調和を保つものと する。また、新たな国際的な規律の形成に際しては、我が国の立場や主張を最大限反映 させるよう努めるものとする。 6 定期的な見直し この計画については、森林及び林業をめぐる情勢の変化並びに施策の効果に関する評 価を踏まえ、おおむね5年ごとに見直し、所要の変更を行うものとする。 51 参 考 付 表 「 」 、 。森林・林業基本計画 の参考であり 閣議決定されたものではない 52 ○ 木材のすう勢見通し等 (単位:百万m )3 利 用 量 総需要量 比 率 ( ) ( )( )( )用 途 区 分 ( )実 績 すう勢 目 標 実 績 見通し 平成11年 平成22年 平成22年 平成11年 平成22年 (a) (b) (c) (d) (e) (a/d) (b/e) (c/e) 製材用材 13 10 18 42 41 30% 24% 44% パルプ・チップ用材 5 4 5 41 41 12% 10% 12% 合板用材 0 0 1 14 15 0% 0% 7% その他 1 1 1 3 3 33% 33% 33% 合 計 20 15 25 100 100 20% 15% 25% 注)比率は、総需要量に占める国産材の利用量の割合である。 53 ○ 樹種別素材材積の見通し (単位:百万m3) 樹 種 現 状 平成22年 平成32年 ス ギ 8 10 13 ヒノキ 2 4 7 カラマツ 2 3 4 その他 8 9 9 計 20 25 33 現状は「木材需給報告書 (平成11年度)による。注) 」 ○径級別素材材積割合の見通し 平成22年 平成32年 径級区分 現 状 スギ ヒノキ スギ ヒノキ 8~12 cm 15% 6% 25% 4% 17% 14~18 cm 40% 25% 43% 16% 36% 20~28 cm 25% 52% 30% 51% 44% 30cm~ 20% 17% 2% 29% 3% 計 100% 100% 100% 100% 100% 現状は「最新木材工業辞典 (平成11年2月)よる。注) 」 54 ○ 林地残材・再利用材の見通し (単位:百万m )3 現 状 平成22年 発 林地残材 10 10(平成11年) ※1 生 製材工場等残廃材 15 13(平成10年) ※2 量 建設発生木材 16 32(平成 7年) ※3 計 41 55 利 エネルギー利用 7 20 用 原料その他 13 24 量 計 20 44 (出典)※1林野庁試算(間伐材、被害材を含む) ※2財団法人日本木材総合情報センター「木質系残廃材を原料とするチップ製造業」 ※3建設省「建設副産物実態調査」から試算 55 ○ 広く国民に開かれた森林の整備と利用に関する指標 ① 森林環境教育の推進 様々な体験活動を通じた森林環境教育の機会を、子どもたちをはじめ広く国民 に提供していく際の目安となる指標は次のとおり。 (単位:万人日) 平成12年 平成32年 森林体験学習等の受入数 35~40 300~400 ② 健康づくり等の森林利用の推進 高齢者をはじめ国民の健康づくりや生涯学習に資するよう、ユニバーサルデザイン という考え方を踏まえつつバリアフリーに配慮した歩道等が整備された森林を確保し ていく際の目安となる指標は次のとおり。 (単位:カ所) 平成12年 平成32年 バリアフリーに配慮した 歩道等が整備された森林 113 1,000 56 この計画は、森林・林業基本法(昭和39年法律第161号)第11条 第6項の規定に基づき、国会に報告するものである。

Basic Plan for Forests and Forestry (2001) · Nelum