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قوانين اليابان

New Basic Plan for Forests and Forestry (2021)

صدر في 2021-06-15 · النص بتاريخ 2026-10-01

القانون العام والإرشادات الرسمية منشورة بوصفها أبحاثاً. ليست مشورة قانونية أو ضريبية أو مالية.

البحث نفسه مكتوب بالإنجليزية. العناوين والوسوم مترجمة؛ أما النتائج والاقتباسات فغير مترجمة.

عن هذا القانون

اللغة
Japanese
النوع
policy
الدولة
اليابان
الموضوعات
Forestry, Wild species and ecosystems
الكلمات المفتاحية
forest management/forest conservation, policy/planning, afforestation/reforestation, business/industry/corporations, internal trade, international trade, timber, biodiversity, climate change, capacity building, labour, mountain area, private forest, protected area, protection forest, public forest, soil conservation/soil improvement, sustainable development, timber extraction/logging, wild fauna, wild flora
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  1. 森 林 ・ 林 業 基 本 計 画 令和3年6月 森林・林業基本法(昭和39年法律第161号)第11条第7項の規定に基づく 森林・林業基本計画の変更に伴い、同条第8項において準用する同条第6 項の規定に基づき、国会に報告するものである。 目 次 まえがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第1 森林及び林業に関する施策についての基本的な方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1 前基本計画に基づく施策の評価等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (1)前基本計画に掲げた目標の進捗状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (2)前基本計画に基づく主な施策の評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (3)前基本計画策定以降の情勢変化等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 2 森林及び林業をめぐる情勢変化等を踏まえた対応方向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 (1)森林・林業・木材産業によるグリーン成長・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 (2)森林資源の適正な管理及び利用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 (3)「新しい林業」に向けた取組の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 (4)木材産業の「国際競争力」と「地場競争力」の強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 (5)都市等における「第2の森林」づくり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 (6)新たな山村価値の創造・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 3 施策展開に当たっての基本的な視点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 (1)現場に立脚した施策の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 (2)新たな技術の積極的な活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 (3)国民理解の促進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 4 森林・林業・木材産業関係者に特に必要とされる視点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 第2 森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標・・・ 9 1 目標の性格・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 2 森林の有する多面的機能の発揮に関する目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 (1)目標の基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 (2)目標の定め方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 (3)森林の機能と望ましい姿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 (4)森林の誘導の考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 (5)森林の有する多面的機能の発揮に関する目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 3 林産物の供給及び利用に関する目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 (1)目標の基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 (2)目標の定め方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 第3 森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策・・・・・・・・・・・・・ 15 1 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 (1)適切な森林施業の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 (2)面的なまとまりをもった森林管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 (3)再造林の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 (4)野生鳥獣による被害への対策の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 (5)適切な間伐等の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 (6)路網整備の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 (7)複層林化と天然生林の保全管理等の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 (8)カーボンニュートラル実現への貢献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 (9)国土の保全等の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 (10)研究・技術開発及びその普及・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 (11)新たな山村価値の創造・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 (12)国民参加の森林づくり等の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 (13)国際的な協調及び貢献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 2 林業の持続的かつ健全な発展に関する施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 (1)望ましい林業構造の確立・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 (2)担い手となる林業経営体の育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 (3)人材の育成・確保等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 (4)林業従事者の労働環境の改善・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 (5)森林保険による損失の補塡・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 (6)特用林産物の生産振興・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 3 林産物の供給及び利用の確保に関する施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 (1)原木の安定供給・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 (2)木材産業の競争力強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 (3)都市等における木材利用の促進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 (4)生活関連分野等における木材利用の促進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 (5)木質バイオマスの利用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 (6)木材等の輸出促進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 (7)消費者等の理解の醸成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 (8)林産物の輸入に関する措置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 4 国有林野の管理及び経営に関する施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35 5 その他横断的に推進すべき施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 (1)デジタル化の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 (2)新型コロナウイルス感染症への対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 (3)東日本大震災からの復興・創生・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 6 団体に関する施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 第4 森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項・・ 38 1 各種計画等との調和・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 2 効果的かつ効率的な施策の推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 3 施策の進捗管理と評価の適切な活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 4 財政措置の効率的かつ重点的な運用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 1 まえがき 我が国の森林は、国土の約3分の2を占め、国土の保全、水源の涵養、生物多様性の保 かん 全、地球温暖化の防止、文化の形成、木材等の物質生産等の多面的機能を有しており、国 民生活に様々な恩恵をもたらす「緑の社会資本」である。それらの機能を持続的に発揮さ せていくためには、将来にわたり、森林を適切に整備及び保全していかなければならない。 また、林業・木材産業は、就業機会の創出や定住促進等を通じて、地方の経済社会の維 持・発展に寄与する極めて重要な産業である。しかし、その役割は、「産業」としてのそ れにとどまるものではない。林業生産活動を長期にわたり持続的に行うことにより、森林 整備が適切になされ、空間的にも時間的にも多様な森林が形成される。そのような森林か ら生産された木材を利用することは、森林整備の促進のみならず、二酸化炭素の排出抑制 及び炭素の貯蔵を通じて、循環型社会の実現に寄与するものである。 森林・林業政策については、森林・林業基本法(昭和39年法律第161号。以下「基本法」 という。)に基づき、森林の有する多面的機能の発揮、林業の持続的かつ健全な発展とい う基本理念の実現に向け、各般の施策を推進してきた。平成28年5月に閣議決定された森 林・林業基本計画(以下「前基本計画」という。)の下では、人工林資源が本格的な利用 期を迎えたことなどを背景に、林業・木材産業の成長産業化を図ることとした。その結果、 十分な成長量と森林蓄積を維持しつつ木材供給量は拡大し、林業産出額や従事者給与の増 加を実現するなど一定の成果を上げてきた。他方、その過程において、伐採しやすい箇所 に皆伐が偏り再造林がなされない森林が見受けられる、豪雨の増加等により山地災害が頻 発するといった、多面的機能の発揮に支障を及ぼしかねない新たな課題も生じている。 そして、我が国の経済社会全体に目を転ずれば、急速な少子高齢化と人口減少による経 済停滞・地方の衰退が懸念され、地球温暖化に伴う気候変動の影響が各方面で表れるなど、 大きな情勢の変化が生じている。さらには、足下では、新型コロナウイルス感染症の流行 により経済社会の運営は難しい局面を迎えている。これらの課題に対処していくためには、 短期的な効率性や合理性のみを重視するのではなく、持続可能で多様性と包摂性のある社 会の実現を目指していくこと、すなわち、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け た取組が重要となっている。このことは、森林・林業・木材産業分野においても同様に必 要となる視点である。 このような状況を踏まえれば、環境・経済・社会の諸課題に統合的に取り組むことを通 じて、これからの森林・林業・木材産業を真に持続的な姿へと発展させていくことが肝要 である。新たな森林・林業基本計画(以下「基本計画」という。)においては、前基本計 画の施策の評価を行った上で、課題や情勢変化、今後の施策展開に当たっての視点、基本 的な方向を明らかとした。この基本計画を指針とし、森林・林業・木材産業に携わる全て の関係者が主体的な取組を展開することを期待する。 なお、この基本計画は、今後20年程度を見通して定めるものであるが、森林・林業をめ ぐる情勢の変化及び施策の効果の全般にわたる評価を踏まえ、おおむね5年ごとに見直し、 所要の変更を行う。 2 第1 森林及び林業に関する施策についての基本的な方針 基本法が掲げる基本理念を実現し、国民生活の安定・向上と国民経済の健全な発展を 図るため、前基本計画に基づく施策の評価や各般の情勢変化を踏まえた政策的な対応方 向を明らかにして、森林・林業に関する施策を体系的に講じていく。 1 前基本計画に基づく施策の評価等 (1)前基本計画に掲げた目標の進捗状況 ア 森林の有する多面的機能の発揮に関する目標 前基本計画では、多面的機能の発揮に向けて、多様な森林がバランス良く賦存す る「指向する森林の状態」を参考に示し、これに到達する過程の森林の状態を目標 として設定した。令和2年においては、育成単層林1,020万ha、育成複層林120万ha、 天然生林1,360万ha、総蓄積53億㎥等という状態へと誘導することを目標とした。 この目標に対して、誘導が遅れている育成複層林の面積が110万haにとどまって いるほかは、実績の数値自体は順調に推移している。しかし、近年の主伐面積に対 する再造林面積は低位にあり、林業に適し、将来にわたり維持すべき育成単層林に おいて、人工林資源が再造成されていない状況が見受けられる。 イ 林産物の供給及び利用に関する目標 前基本計画では、望ましい森林の整備及び保全が行われた場合の木材供給量とと もに、需要動向を見通した用途別の木材利用量の目標を示した。その際、総需要量 を79百万㎥と見通した上で、木材供給量を32百万㎥とすることなどを令和2年の目 標とした。 この目標に対して、燃料材が見通しを上回るペースで推移するなどして、令和元 年の総需要量は82百万㎥まで増加した。木材供給量は、おおむね計画どおりの31百 万㎥となった。また、用途別の木材利用量は、製材用材及び合板用材が若干の増加 にとどまる一方で、燃料材の利用が大きな伸びを見せた。 (2)前基本計画に基づく主な施策の評価 前基本計画の下では、林業・木材産業の成長産業化を図ることを目指して、原木 の安定供給体制の確立などの供給対策と、新たな木質部材の開発・普及などの需要 対策等を併せて推進してきた。これらの主な施策の進捗状況、効果等を評価すると、 次のとおりである。 ア 森林施業の集約化等の取組に関しては、これを進めるため、森林経営計画の作成 促進とともに、林地台帳制度、共有者不確知森林制度及び森林経営管理法(平成30 年法律第35号)に基づく枠組み(以下「森林経営管理制度」という。)の創設等を 行った。特に森林経営管理制度については、森林環境税及び森林環境譲与税と併せ て措置し、令和2年度末までに、市町村の5割が森林所有者の意向調査に取り組み、 約35万haの森林が調査され、150超の市町村が経営管理権集積計画を策定する見込 3 みとなるなど取組が進展した。 イ 再造林の推進に関しては、優良種苗の生産、造林コストの低減等の取組を行った。 種苗関係については、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法(平成20年法 律第32号。以下「間伐等特措法」という。)に基づく特定母樹の指定が令和3年3 月に総計413品種に達し、採種園・採穂園の造成により増殖された特定母樹は約5 万本となった。また、原種苗木の増産技術の開発も進展した。しかしながら、今後 の苗木需要の増大を見据えて、優良種苗の確保に関する取組を強化する必要がある。 造林コストの低減等については、伐採と造林の一貫作業の導入等を進めてきた。し かし、立木販売収入から再造林費用を賄える状況にはなっておらず、近年の主伐面 積に対する再造林面積の割合は約3割にとどまっている。また、伐採後に適切な更 新がなされていない造林未済地は、平成29年度末で約1.1万haに増加した。 ウ 林業経営体の育成に関しては、高性能林業機械の導入、現場技能者等の育成、I CT(情報通信技術)等を活用する「スマート林業」の実践などの取組を行った。 また、森林経営管理制度により、市町村が森林所有者と林業経営体をつなぐ仕組み を整備した。同制度に基づき、都道府県においては、令和3年3月現在で1,389の経 営体を公表している。さらに、森林組合系統の経営基盤や販売力の強化を図るため、 令和2年に森林組合法(昭和53年法律第36号)の改正等を行った。 その結果、これらの経営体の規模拡大や生産性の向上は徐々に進み、従事者給与 も増加してはいるが、その取組は途上にある。林業経営は依然厳しい状況を脱して おらず、製材・合板工場等への安定供給を通じて価格交渉力を高め、山元立木価格 及び原木価格を確保していくことも課題である。 エ 原木の安定供給に関しては、林業経営体など川上の生産体制が強化され生産量が 増大し、製材・合板工場など川中との協定取引や直送等の取組が進んだ。その結果、 令和元年の木材供給量は、前基本計画の策定前から約2割増加して31百万㎥となっ た。また、直送量は約1割増加して11百万㎥となるなど「量的な拡大」が一定程度 進展した。原木の生産及び流通の更なる効率化に向け、商流と物流の分離等の取組 が必要である。 オ 木材加工流通施設の整備等の取組に関しては、近年、製材・合板工場の整備が進 み、それらの原木の年間追加消費量は合計130万㎥程度に相当するなど、その規模 及び生産性は向上した。大規模なメーカー単位での製品供給が定着する一方で、中 小地場工場はその特性を活かした競争力強化が必要となっている。 4 カ 新たな木材需要の創出に向けた取組に関しては、耐火部材等の開発・普及や輸出 促進、木質バイオマスの利用促進などの取組を行った。その結果、CLT(直交集 成板)や耐火部材等の開発・普及が進み、公共建築物における木造率は令和元年度 には14%に上昇した。民間の非住宅分野でも、企業による木造店舗が展開されるほ か、中高層の木造耐火建築物のプロジェクトが数多く誕生し始めている。一方で、 これらの用途での木材利用を推進していく上でも、木材製品におけるJAS(日本 農林規格)認証取得は不可欠であるが、その格付率は、特に製材分野で低位にある。 木材等の輸出については、「農林水産物・食品の国別・品目別輸出戦略」(平成25 年8月農林水産省策定)に基づき、輸出先国でのセミナーの開催、輸出向け製品の 販路開拓のための住宅設計・施工マニュアルの作成等の取組を行った。その結果、 令和2年には、輸出額は5年間で1.5倍の357億円まで増加した。また、同年12月に は、輸出戦略を見直して対策の強化を図った。 木質バイオマス関係については、FIT(固定価格買取)制度により認定された 発電施設が本格的に稼働し、燃料材に係る需要が大きく増加した。燃料材に係る国 産材利用量は5年間で3.5倍の7百万㎥となり、国産材需要を下支えする役割を果 たした。しかしながら、その需要が大きく膨らむ中で、地域によっては、発電事業 者間や既存需要者との間での原木需要の競合、森林資源の持続的利用に対する懸念 が生じている。 このように、前基本計画に基づく施策の実施により、森林資源の適正な管理及び 利用並びに林業経営基盤の強化を図る条件整備がなされ、原木生産の量的な拡大や、 製材・合板工場等の生産性向上が図られるなど一定の成果が得られた。しかしなが ら、それらの取組は途上にある。現状においては、我が国の森林・林業・木材産業 は、真に持続的なものへと発展できていない。 (3)前基本計画策定以降の情勢変化等 我が国は、地球温暖化に伴う気候変動、少子高齢化と人口減少、新型コロナウイ ルス感染症の流行など大きな変化に直面しており、それらに対応しながら、各般の 施策を進めていくことが求められている。 令和2年以降の温室効果ガス削減等に関する国際的な枠組みであるパリ協定が発 効する中、気候変動による影響が各方面で表れており、環境関係のリスクが社会経 済活動の持続性に影響を及ぼすとの危機意識が世界で高まっている。これを受け、 日本を含む多くの国々が、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロとす る「2050年カーボンニュートラル」を表明した。また、令和2年1月には、日本人 人口の減少幅(前年同月比)が初めて50万人を超えた。生産年齢人口も減少してお り、人手不足や国内市場の縮小など社会経済の活力低下が懸念されている。さらに は、新型コロナウイルス感染症の流行は、経済活動の停滞を招いただけでなく、人 5 々に生活様式の見直しをも迫るものとなっている。このような変化は、森林・林業 ・木材産業に無縁なものではない。気候変動に伴う豪雨や暴風、豪雪など極端現象 の増加は、山地災害や森林被害等を頻発させている。少子高齢化と人口減少が先行 する山村では、林業従事者の確保、集落の維持等が困難となることも懸念されてい る。また、新型コロナウイルス感染症の流行による経済停滞は、今後の木材需要を 不透明なものとしている。 しかし、大局的に見れば、林業・木材産業はこれまでの施策により、成長発展の 方向へと歩みを進めていると評価できる。近年、その歩みを後押しするリモートセ ンシングやICT、高性能林業機械の開発、成長に優れたエリートツリー等(特定 母樹)の育種育苗技術などの進展も著しい。また、木質部材の開発は急速に進み、 都市等における木材利用の気運も高まりを見せている。木材等の輸出は順調に増加 しており、従来の中国等への丸太の輸出に加えて、米国向けの木材製品の輸出も始 まっている。カーボンニュートラルの実現に向けては、森林吸収量の確保・強化だ けでなく、再生可能エネルギーの利用促進の観点から、木質バイオマスや林地の適 正な利用への期待が高まっている。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行は、 人々の価値観や働き方の多様化を促し、テレワーク等によるデジタル社会への転換、 健康でゆとりある生活を求めて過密な都市から地方への「人の流れ」を生み出す可 能性を強く示唆した。 今後の施策展開に当たっては、以上のような前基本計画に基づく施策の評価、そ の策定以降の情勢変化等を十分に踏まえていく必要がある。 2 森林及び林業をめぐる情勢変化等を踏まえた対応方向 (1)森林・林業・木材産業によるグリーン成長 全ての人々が、自然の恵みを受け続けながら、豊かで人間的・文化的な社会経 済生活を営むことのできる社会の構築を目指す。このため、国土と自然環境の根 幹である森林の適正な管理と、森林資源の持続的な利用を一層推進する。 これにより、林業・木材産業が内包する持続性を高めながら成長発展させ、人 々が森林の発揮する多面的機能の恩恵を享受できるようにすることを通じて、社 会経済生活の向上とカーボンニュートラルに寄与する「グリーン成長」を実現し ていく。 (2)森林資源の適正な管理及び利用 人工林資源の循環利用を推進しつつ、我が国の森林を多様で健全な姿へと誘導し ていく。このため、林業適地の育成単層林については、適正な伐採と再造林の確保 を図る。それ以外の育成単層林は効率的に育成複層林へと誘導していく。あわせて、 順応的管理の考え方に基づき、天然生林について適切な保全管理等を図る。また、 気候変動に伴う豪雨の増加等に対応するため、国土強靱化に向けた森林整備及び治 じん 6 山対策を加速していく。 全ての森林は、豊かな生物多様性を支える重要な構成要素であるとの認識に立ち、 森林が多様な生物の生育・生息の場として機能し、持続的な林業生産活動を通じて、 空間的にも時間的にも多様な森林が形成されるよう、各般の施策を展開していく。 (3)「新しい林業」に向けた取組の展開 林業については、原木の安定供給や機械化等の取組にとどまらず、生産性や安全 性の抜本的な向上を図っていく。このため、従来の施業方法等を見直し、エリート ツリーや自動操作機械等の新技術を取り入れて、伐採から再造林・保育に至る収支 のプラス転換を可能とする「新しい林業」を目指す取組を展開する。 あわせて、長期にわたり経営し得る権利等と規模を確保し、林業従事者の生活を 支える所得と労働環境の向上を図る取組を促進する。これらを通じて「長期にわた る持続的な経営」を実現できる林業経営体を育成していく。 (4)木材産業の「国際競争力」と「地場競争力」の強化 木材産業については、住宅の品質や構造安全性の確保等を目的とする関係法令、 消費者や建築メーカー・プレカット工場など実需者のニーズに的確に対応し、製品 を供給していくことが求められている。 このため、主に大規模な製材・合板工場等については、外材や他資材に対抗でき る品質性能の確かな製品を低コストで安定供給できる体制を整備して「国際競争力」 を高めていく。あわせて、中小地場の製材工場等については、地域における多様な 消費者ニーズをくみ取り、大径材も活用しながら単価の高い板材や平角など多品目 を供給できる体制を整備する。これにより、製品の優位性等を向上させて、収益性 を有する「地場競争力」を高めていく。 (5)都市等における「第2の森林」づくり も り 脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関す る法律(平成22年法律第36号。以下「木材利用促進法」という。)の整備、新たな 木質部材の開発等により、木造住宅等の既存分野以外でも木材の利用が広がりを見 せ始めている。 このため、防耐火や構造計算に対応できる部材の開発・普及、JAS製材の供給 体制の強化等により、中高層建築物や非住宅分野等での新たな木材需要の獲得を目 指す。また、付加価値の高い木材製品の輸出についても推進する。さらに、木質バ イオマスの発電及び熱利用や、風力・地熱発電のための林地の適正な活用を通じて 再生可能エネルギーの利用も促進する。これらの取組を通じ、製造時のエネルギー 消費が少なく、炭素貯蔵効果の長期発揮が期待できる木材の利用を促進するととも に、温室効果ガスの排出削減にも寄与し、循環型社会の実現を図っていく。 7 (6)新たな山村価値の創造 山村地域には、森林の約6割が賦存しており、その土地に根ざした文化や習俗等 が引き継がれている。また、森林管理を支える林業従事者が居住する生活基盤とし ても重要な地域である。少子高齢化と人口減少が進む山村地域での生活を成り立た せていくためには、外部依存性が高く、自立性の弱い経済を克服するとともに、生 活の基盤となる集落を維持していくことが不可欠である。その際、山村地域の住民 と生活に、地域の森林が何をなし得るのかとの視点を持つことが重要である。 このため、基幹産業たる林業・木材産業のみならず、森林空間を総合的に活用す る「森林サービス産業」等の新たな産業を育成することなどで、山村の内発的な発 展を図る。また、新型コロナウイルス感染症の流行等を契機として新たなライフス タイルを求める人々に対し、山村地域の魅力を発信することなどを通じて、山村地 域と継続的に関わる「関係人口」の拡大を目指す。さらには、集落維持の下支えと して、地域における農林地の管理や利用等の協働活動を促進する。 3 施策展開に当たっての基本的な視点 この基本計画は、今後20年程度を見通して森林・林業に関する各種施策の基本的な 方向性を示すものであり、次の視点を踏まえて施策を展開していく。 (1)現場に立脚した施策の展開 森林・林業・木材産業の現場が抱える課題に的確に対応するため、「現場の声」 を把握して、関係者が創意工夫して課題を解決できるよう、現場に立脚した施策を 展開する。その際、関係府省や地方公共団体と緊密な連携を図るとともに、国有林 野のフィールドや技術力等も活用して、課題に対応した具体的な取組を進めていく。 (2)新たな技術の積極的な活用 近年、エリートツリー等の育種育苗技術、リモートセンシング、遠隔操作・自動 操作機械、ICT、耐火部材など、新たな技術の開発が著しく進展している。森林 ・林業・木材産業の分野においても、これらの技術を積極的に活用して現場実装を 図っていく。 (3)国民理解の促進 各般の施策を推進していくためには、関係者が一体となって努力していくだけで なく、幅広い国民各界各層の理解を得ていく必要がある。そのためには、森林・林 業・木材産業の果たす役割、木材利用の意義や木材に関する情報等を積極的に発信 し、国民一人一人がそれを共有することで、森林を社会全体で支えていこうという 気運を醸成していく。 8 4 森林・林業・木材産業関係者に特に必要とされる視点 施策の推進に当たっては、全ての国民が適切な役割分担の下、相互の連携を図りつ つ、一体となって努力することが求められる。 このため、国や地方公共団体においては、現場での具体的な取組が進むよう、施策 の充実と効果的な展開に努めていく。 森林・林業・木材産業関係者においては、自らの短期的な利益のみを追求するので はなく、国土と自然環境の根幹である森林の適正な管理、森林資源の持続的な利用を 確保すべく、効率的なサプライチェーン 注 を構築して相互利益を拡大しつつ、再造林 につなげるとの視点を共有し努力していくことを期待する。 注:製品の調達・製造から流通を経て消費者等に届くまでの一連の工程をいう。 9 第2 森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標 1 目標の性格 この基本計画において定める目標は、森林の整備及び保全、林業・木材産業等の事 業活動や林産物の消費に関する指針として定めるものである。 具体的な目標については、森林・林業に関する施策を推進していく上で、取組の進 捗状況を総合的かつ客観的に評価できるよう、数値によるものとする。 2 森林の有する多面的機能の発揮に関する目標 (1)目標の基本的な考え方 将来にわたり多面的機能を高度に発揮していくためには、森林の現況、自然条件、 地域の経済社会の要請等を踏まえながら、人為的な整備及び保全により多様な森林 へと誘導していく必要がある。このことから、機能発揮に向けた誘導の考え方、森 林の状態等を明らかとする。 (2)目標の定め方 森林の機能とその機能を発揮する上での望ましい姿を例示するとともに、機能発 揮に向けた誘導の考え方を森林の区分ごとに明らかとする。その上で、多様な森林 がバランス良く賦存する「指向する森林の状態」を参考として示し、これに到達す る過程の5年後、10年後、20年後の森林の状態を目標として示す。 (3)森林の機能と望ましい姿 森林の主な機能は、水源涵養機能、山地災害防止機能/土壌保全機能、快適環境 形成機能、保健・レクリエーション機能、文化機能、生物多様性保全機能及び地球 環境保全機能からなる公益的機能と木材等生産機能とに大別される。 各機能に応じた森林の望ましい姿については、次のとおりである。 (水源涵養機能) 下層植生とともに樹木の根が発達することにより、水を蓄える隙間に富んだ浸透 ・保水能力の高い森林土壌を有する森林であって、必要に応じて浸透を促進する施 設が整備されている森林。 (山地災害防止機能/土壌保全機能) 下層植生が生育するための空間が確保され、適度な光が射し込み、下層植生とと もに樹木の根が深く広く発達し土壌を保持する能力に優れた森林であって、必要に 応じて山地災害を防ぐ施設が整備されている森林。 (快適環境形成機能) 樹高が高く枝葉が多く茂っているなど遮蔽能力や汚染物質の吸着能力が高く、諸 被害に対する抵抗性が高い森林。 10 (保健・レクリエーション機能) 身近な自然・自然とのふれあいの場として適切に管理され、多様な樹種等からな り、住民等に憩いと学びの場を提供している森林であって、必要に応じて保健・教 育活動に適した施設が整備されている森林。 (文化機能) 史跡・名勝等と一体となって潤いのある自然景観や歴史的風致を構成している森 林であって、必要に応じて文化活動に適した施設が整備されているなど、精神的・ 文化的・知的向上等を促す場としての森林。 (生物多様性保全機能) 全ての森林が発揮するものであるが、属地的に機能が発揮されるものを示せば、 原生的な森林生態系、希少な生物が生育・生息する森林、陸域・水域にまたがり特 有の生物が生育・生息する渓畔林等、その土地固有の生物群集を構成する森林。 けいはん (木材等生産機能) 林木の生育に適した土壌を有し、木材として利用する上で良好な樹木により構成 され成長量が大きい森林であって、林道等の基盤施設が適切に整備されている森林。 (地球環境保全機能) 二酸化炭素の吸収や炭素の固定、蒸発散作用等により地球環境を調節する属地性 のない機能であり、全ての森林が発揮するもの。 (4)森林の誘導の考え方 ア 育成単層林・育成複層林・天然生林の区分 期待する機能の発揮に向けた森林への誘導について、育成のための造林・保育な ど人為の程度、単層・複層という森林の階層構造に着目し、次の区分ごとに示す。 (ア)育成単層林 森林を構成する林木を皆伐により伐採し、単一の樹冠層を構成する森林として 人為により成立させ維持される森林。例えば、植栽によるスギ・ヒノキ等からな る森林。 (イ)育成複層林 森林を構成する林木を帯状若しくは群状又は単木で伐採し、一定の範囲又は同 一空間において、林齢や樹種の違いから複数の樹冠層を構成する森林として人為 により成立させ維持される森林。例えば、針葉樹を上木とし、広葉樹を下木とす る森林や、針葉樹と広葉樹など異なる林相の林分がモザイク状に混ざり合った森 林。 (ウ)天然生林 主として自然に散布された種子等により成立し、維持される森林。例えば、天 然更新によるシイ、カシ、ブナ、コメツガ、シラビソ、エゾマツ、トドマツ等か らなる森林。このほか、未立木地、竹林等を含む。 11 イ 誘導の考え方 (ア)基本的な考え方 我が国の森林は、戦後に造成された人工林が全体の約4割を占め、その多くが 資源として利用可能な段階を迎えている。このため、森林資源の充実と公益的機 能の発揮を図りながら循環的に利用していく。具体的には、自然的・社会的条件 を勘案しつつ、現況が育成単層林のうち、林業に適した場所に位置する森林はこ れを維持する一方で、それ以外は育成複層林化を図る。あわせて、天然生林を適 切に維持することなどにより、一定の広がりにおいて様々な生育段階や樹種から 構成される森林がバランス良く配置された望ましい森林の姿へと誘導する。 (イ)森林の区分に応じた誘導の考え方 a 育成単層林 現況が育成単層林となっている森林のうち、林地生産力が比較的高く、かつ、 傾斜が緩やかな場所に位置するものについては、木材等生産機能の発揮を期待 する育成単層林として確実に維持し、資源の充実を図る。この場合、短伐期や 長伐期など多様な伐期での伐採と植栽による確実な更新を図る。伐採に当たっ ては、土砂の流出を招かないよう、搬出方法の選択、保護樹帯の設置等を適切 に行う。また、水源涵養機能又は山地災害防止機能/土壌保全機能の発揮を同 時に期待する森林では、伐採に伴う裸地化による影響を軽減するため、自然条 件等に応じて皆伐面積の縮小・分散や、間伐の繰り返しによる伐期の長期化、 植栽による確実な更新を図る。 また、急傾斜の森林又は林地生産力の低い森林については、育成複層林に誘 導する。この場合、水源涵養等の公益的機能と木材等生産機能の発揮を同時に 期待する森林では、自然条件等に応じ、帯状又は群状の伐採と植栽による確実 な更新により効率的に育成複層林に誘導する。林地生産力が低く公益的機能の 発揮のため継続的な育成管理が必要なその他の森林は、自然条件等に応じて択 伐や帯状又は群状の伐採と広葉樹の導入等により針広混交の育成複層林に誘導 する。 なお、快適環境形成機能、保健・レクリエーション機能及び文化機能の発揮 を期待する森林では、上記の考え方によらず、景観の創出等の観点から、間伐 等の繰り返しにより長期にわたって育成単層林を維持するか、又は自然条件等 に応じ広葉樹の導入等により針広混交の育成複層林に誘導する。また、希少な 生物が生育・生息する森林など属地的に生物多様性保全機能の発揮が求められ る森林においては、天然力を活用した更新を促し、針広混交の育成複層林又は 天然生林に誘導する。 12 b 育成複層林 現況が育成複層林となっている森林については、公益的機能の発揮のため引 き続き育成複層林として維持することを基本とする。ただし、希少な生物が生 育・生息する森林など属地的に生物多様性保全機能の発揮が求められる森林に おいては、必要に応じて、天然力の活用により、天然生林への誘導を図る。 c 天然生林 現況が天然生林となっている森林のうち、いわゆる里山林など下層植生等の 状況から公益的機能発揮のために継続的な維持・管理が必要な森林や、針葉樹 単層林に介在して継続的な資源利用が見込まれる広葉樹林等については、更新 補助作業等により育成複層林に誘導する。 その他の森林は、天然生林として維持する。特に、原生的な森林生態系や希 少な生物が生育・生息する森林等については、自然の推移に委ねることを基本 として、必要に応じて植生の復元を図る。 (ウ)森林の区分に応じた路網整備の考え方 森林の整備及び保全、木材の生産及び流通の効率化を図るには、路網整備が不 可欠であり、「指向する森林の状態」に応じた適切な路網整備を進める。基本的 には、育成単層林等に対して重点的に路網を整備し、天然生林においては現存路 網を維持していく。その際、高性能林業機械開発の進展状況等を踏まえつつ、傾 斜区分別の作業システムに応じ、林道と森林作業道を適切に組み合わせて整備す る。具体的には、緩傾斜地では車両系を前提とした高密路網、中傾斜地では車両 系又は架線系、急傾斜地・急峻地では架線系を前提に林道を基幹とした路網の整 備を推進する。 13 (5)森林の有する多面的機能の発揮に関する目標 森林の有する多面的機能の発揮に関する目標は、第1に掲げた基本的な方針を踏 まえ、第3に掲げる施策の適切な実施により、各般の課題が解決された場合に実現 可能なものとして、次の第1表のとおりとする。 第1表 森林の有する多面的機能の発揮に関する目標 目標とする森林の状態 令和2年 (現況) 令和7年 令和12年 令和22年 森林面積(万ha) 育 成 単 層 林 1,010 1,000 990 970 育 成 複 層 林 110 130 150 190 天 然 生 林 1,380 1,370 1,360 1,340 合 計 2,510 2,510 2,510 2,510 総蓄積(百万㎥) 5,410 5,660 5,860 6,180 ha当たり蓄積(㎥/ha) 216 225 233 246 総成長量(百万㎥/年) 70 67 65 63 ha当たり成長量(㎥/ha年) 2.8 2.7 2.6 2.5 (参考) 〇 指向する森林の状態 (万ha) 育成単層林 育成複層林 天然生林 合計 660 680 1,170 2,510 〇 指向する森林の状態に向けた誘導の内訳 (万ha) 育成単層林 木材等生産機能の発揮が特に期待されるなど育成単層林として整備される森林 660 公益的機能の一層の発揮のため自然条件等を踏まえて育成複層林に誘導される森林 340 公益的機能の発揮のため伐採が強度に規制されているなど天然生林に誘導される森林 20 天然生林 主に天然力により健全性が確保され公益的機能の発揮のため天然生林として維持される森林 1,150 各種機能の発揮のため継続的な育成管理により育成複層林に誘導される森林 230 注1:森林面積は、10万ha単位で四捨五入しているため、計が一致しないものがある。 2:目標とする森林の状態及び指向する森林の状態は、令和2年を基準として算出している。 3:令和2年の値は、令和2年4月1日の数値である。 14 3 林産物の供給及び利用に関する目標 (1)目標の基本的な考え方 林業の持続的かつ健全な発展並びにそれを通じた森林の適切な整備及び保全を図 るためには、国産材の供給や利用を促進していく必要があることから、木材供給量 及び木材利用量を明らかとする。 (2)目標の定め方 供給の目標については、期待する機能の発揮に向けた森林の整備及び保全が行わ れた場合に供給される木材の量として、次の第2表のとおりとする。 利用の目標については、今後の需要動向を見通した上で、各般の課題に向けた取 組が適切に進められた場合に実現可能な用途別の木材利用量として、次の第3表の とおりとする。 第2表 木材供給量の目標 (単位:百万㎥) (実績) (目標) (目標) 令和元年 令和7年 令和12年 木材供給量 31 40 42 第3表 用途別の木材利用量の目標 (単位:百万㎥) 総需要量 利用量 (実績) (見通し) (見通し) (実績) (目標) (目標) 令和元年 令和7年 令和12年 令和元年 令和7年 令和12年 建築用材等 計 38 40 41 18 25 26 製材用材 28 29 30 13 17 19 合板用材 10 11 11 5 7 7 非建築用材等 計 44 47 47 13 15 16 パルプ・チップ用材 32 30 29 5 5 5 燃料材 10 15 16 7 8 9 その他 2 2 2 2 2 2 合 計 82 87 87 31 40 42 注1:用途別の利用量は、国産材に係るものである。 2:「燃料材」とは、ペレット、薪、炭、燃料用チップである。 3:「その他」とは、しいたけ原木、原木輸出等である。 4:百万㎥単位で四捨五入しているため、計が一致しないものがある。 15 第3 森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策 1 森林の有する多面的機能の発揮に関する施策 多面的機能を将来にわたって持続的に発揮できるよう、「指向する森林の状態」へ と誘導するための森林の整備及び保全等の施策を総合的かつ体系的に進めていく。そ の際には、流域保全及び自然環境の保全の観点から、河川事業や自然公園事業等の施 策との連携を図る。 (1)適切な森林施業の確保 ア 森林計画制度の下での適切な施業の推進 「指向する森林の状態」を見据えた多様で健全な森林を育成していくため、森林 計画制度の下で、森林所有者等による造林、保育、伐採その他森林施業の適切な実 施を推進していく必要がある。このため、地域森林計画や市町村森林整備計画にお いて、地域ごとに目標とする主伐量や造林量、発揮が期待される機能に応じたゾー ニング等を定める。 とりわけ、木材需要が増加している中で、再造林の実施をより効果的に促進する ため、新たに、特に植栽による更新に適した区域の設定や、森林資源の保続が可能 な主伐量の上限の検討等を進めるよう促す。その際、地域の森林・林業・木材産業 関係者の参画を得ながら取組を進める。 また、森林総合監理士等が、市町村への技術的な支援等を適切に担えるよう、継 続教育等による技術水準の向上を図りつつ、その育成・確保を図る。 イ 適正な伐採と更新の確保 主伐が増加している中で、皆伐地において粗雑に作設された集材路から土砂の流 出・崩壊が発生するケースや、更新方法の検討が十分でないために計画した天然更 新が完了していないケースなど、不適切な施業が行われる事案が一部で生じている。 このため、適正な伐採と更新の確保を図るべく、上記の状況変化等を踏まえた 伐採造林届出制度の見直しを行いつつ、その制度に基づく指導等の強化を図って いく。具体的には、伐採造林届出書及び森林の状況報告書に係る伐採権者と造林 権者の役割等の明確化、集材路の作設など搬出方法に対する指導体制の確立、一 定以上の面積で天然更新が計画された場合の現地確認等を推進する。 また、森林窃盗事案を含む無断伐採の発生防止に向けて、警察とも連携した森 林パトロールなど従来の取組に加え、衛星画像を活用した伐採箇所の効率的な把 握及び監視や、無断伐採等に関する情報を木材流通事業者等に情報提供できる仕 組みの実現などに取り組む。 16 (2)面的なまとまりをもった森林管理 ア 森林の経営管理の集積等 森林の公益的機能は、一団のまとまりを構成する林分が相互に影響し合い、各機 能が重複発揮されることで強力なものとなる。また、小規模零細な所有構造にある 我が国の森林においては、森林施業が分散的に行われ効率性を欠くことが多い。こ のことから、面的なまとまりをもって、森林を経営管理することが重要である。森 林所有者の高齢化や相続による世代交代が急速に進む中にあっては、これまでに整 備された制度等を 大限活用し、経営管理の集積等を図る必要がある。 このため、引き続き、森林境界の明確化、長期施業受委託等とセットとなった森 林経営計画の作成を促進する。また、森林経営管理制度に基づく経営管理権集積計 画の作成等が進むよう、市町村の体制整備や技術的支援等に努める。このほか、森 林組合系統による森林経営事業、民有林と国有林の連携による森林共同施業団地の 取組等を推進する。 なお、所有者不明の森林については、森林経営管理制度や共有者不確知森林制度 等の活用を基本に、政府全体における所有者不明土地問題の解決に向けた制度等の 検討状況を踏まえつつ、適切な経営管理を促進する。 イ 森林関連情報の整備・提供 森林関連情報については、レーザ測量や衛星画像等の活用を進め、森林資源情報 の精度向上を図る。また、森林の土地の所有者届出制度や調査等により得られた情 報を林地台帳へ反映するなどして、森林所有者情報の精度向上を図る。その際、固 定資産課税台帳情報の市町村内部での利用を適切に行う。これらの情報については、 都道府県ごとに導入している標準仕様に基づく森林クラウドに集積して、その共有 と高度利用を図る。さらには、施業集約化に取り組む者等に対し、必要な情報提供 を進める。 適正な森林管理、地域森林計画等の樹立、学術研究の発展に資するため、林況や 生物多様性等の森林経営の基準・指標に係るデータを継続的に把握する森林資源モ ニタリングを引き続き実施し、データの公表・活用を進める。 (3)再造林の推進 ア 優良種苗の安定的な供給 再造林の実施に不可欠な優良種苗を確保するため、林木遺伝資源の収集・保存、 第3世代精英樹等の品種開発、採種園・採穂園の整備、種苗生産者に対する育苗技 術の指導や生産施設整備、収入保険への加入促進などの取組を進める。 特に造林の省力化や低コスト化を図る観点から、成長に優れたエリートツリー等 の種苗、伐採と造林の一貫作業に必要なコンテナ苗の生産体制を整備することとし、 原種苗木の増殖技術の開発、特定母樹由来の苗木の増産、コンテナ苗の生産技術の 17 標準化等を進める。 イ 造林適地の選定 林業に適した林地における再造林の実効性を高めていくため、林野土壌調査等の 過去文献やレーザ測量などを活用し、造林適地を抽出する技術の高度化に取り組む。 また、市町村森林整備計画において、「木材等生産機能維持増進森林」として適切 にゾーニングできるよう、これらの技術の普及を図る。さらには、間伐等特措法に 基づく新たな措置を活用し、自然的・社会的な条件からみて植栽に適した区域を指 定して再造林を促進する。 ウ 造林の省力化と低コスト化 森林資源の持続的な利用と保続培養の観点から、再造林を確実に行うことは不可 欠であるが、大きな費用負担や造林作業手の不足が再造林を実施する上での支障と なっている。このことから、立木販売収入から再造林費用を賄えるよう、新たな技 術を取り入れた省力かつ低コストの造林体系の確立を目指す。 このため、ドローンや林業機械を活用した苗木運搬、伐採と造林の一貫作業や低 密度植栽、エリートツリーや大苗等の植栽による下刈り回数の削減等の取組を進め る。あわせて、歩掛やマニュアルの作成、低密度植栽等に対応した保安林指定施業 要件の見直しなどの条件整備を行う。また、これらの取組を現場実証にとどまらず、 事業ベースに拡大させていくため、森林整備事業の補助内容等に適切に反映する。 (4)野生鳥獣による被害への対策の推進 シカ等野生鳥獣による食害等については、造林地の成林そのものに支障を及ぼす ほか、樹木の枯死や下層植生の消失などにより、森林の公益的機能の発揮にも影響 を及ぼしている。 このため、鳥獣保護管理施策等との連携を図りつつ、引き続き、効果的かつ効率 的な捕獲及び防護技術の開発・実証、林業関係者など地域と連携した捕獲、防護柵 等の設置を推進するほか、野生動物管理を担う人材の育成を図る。また、被害発生 のおそれのある森林については、市町村森林整備計画において、鳥獣害防止森林区 域に積極的に設定して、必要な対策を講じる。このほか、地域の実情に応じて、野 生鳥獣の生息環境となる針広混交林等に誘導するなど、野生鳥獣との共存に配慮し た対策を適切に推進する。これらの取組と併せ、適切な森林管理等の人為活動を活 発化させ、野生鳥獣の農地等への出没の抑制を図る。 18 (5)適切な間伐等の推進 人工林の半数は本格的な利用期を迎えているが、未だ保育の段階にあるものも多 数存在している。また、温室効果ガスの削減等を図るパリ協定下にあっては、森林 吸収源対策としての間伐等を推進していく必要がある。 このため、間伐等特措法の枠組みも活用しつつ、森林整備事業を引き続き推進す るほか、市町村による森林経営管理制度と森林環境譲与税を活用した間伐等を進め ていく。間伐の低コスト化や労働安全の観点から、列状間伐等の普及を推進する。 また、森林整備事業の補助内容や工程等については、現場の取組状況を適切に反映 する。 (6)路網整備の推進 傾斜区分と作業システムに応じた目指すべき路網密度の水準を踏まえつつ、林道 と森林作業道を適切に組み合わせた路網の整備を引き続き進める。その際、災害の 激甚化、走行車両の大型化、未利用材の収集運搬の効率化に対応できるよう、河川 沿いを避けた尾根寄りの線形選択、余裕のある幅員や曲線部の拡幅、土場等の設置、 排水機能の強化などにより、路網の強靱化・長寿命化を図る。 このような観点を踏まえ、路網整備の徹底を図ることとし、林道等の望ましい延 長を示すと、現状の19万kmに対して25万kmとなる。なお、今後15年間の林道等の整 備については約21万kmを目安に進めていく。加えて、既設林道については、改築・ 改良により質的な向上を図ることとし、木材輸送の効率化が可能な大型車両が安全 に通行できる林道の延長を現状の約5千kmから、約7千kmまで増やしていく。 (7)複層林化と天然生林の保全管理等の推進 ア 生物多様性の保全 (ア)生物多様性の保全に配慮した森林施業の推進 一定の広がりにおいて、様々な生育段階や樹種から構成される森林が、モザイ ク状に配置されている「指向する森林の状態」を目指して、多様な森林整備を推 進する。 このため、国有林において面的複層林施業等の先導的な取組を進めるとともに、 市町村による森林経営管理制度と森林環境譲与税を活用した針広混交林化の取組 等を促進する。あわせて、育成単層林施業においても、長伐期化や広葉樹の保残 など生物多様性の保全に配慮した施業を推進する。この際、森林所有者等がそれ らの施業を選択しやすくするための事例収集や情報提供、モザイク施業等の複層 林化に係る技術の普及を行っていく。 (イ)天然生林等の保全管理の推進 原生的な森林生態系、希少な生物が生育・生息する森林、農地や草地等と複合 19 生態系を構成する里山林等の保全管理を推進することは、生物多様性を保全して いく上で重要である。 天然生林の保全管理に向けては、継続的なモニタリングに取り組むとともに、 国有林と民有林が連携して、森林生態系の保存及び復元、点在する希少な森林生 態系の保護管理並びにそれらの森林の連続性確保等に取り組む。また、生物多様 性に重要な地域を保護・保全するために、法令等による保護地域だけでなく、N POや住民等によって生物多様性保全がなされている地域などにおける保全管理 の取組を推進する。さらに、生活の身近にある二次的な里山林等の継続的な保全 管理などを推進する。 (ウ)生物多様性の保全に向けた国民理解の促進 環境に配慮した商品の提供や購入など、日常生活を含む様々な社会経済活動 の中に生物多様性の保全と資源の持続可能な利用を取り込んでいく「生物多様 性の主流化」の考え方が世界で広がっており、これに対する国民理解を促進し ていく必要がある。 このため、生物多様性への理解につながる森林保全活動の展開、地域と国有 林とが連携した自然再生活動や森林環境教育等の取組を推進する。また、森林 認証等への理解促進など、生物多様性の保全と森林資源の持続可能な利用の調 和を図っていく。 イ 公的な関与による森林整備 自然的・社会的条件が悪く林業に適さない場所に位置する森林、奥地水源等の保 安林などについては、公益的機能の発揮に向け、公的主体による森林整備を実施体 制の整備を図りつつ推進する。 このため、市町村による森林経営管理制度と森林環境譲与税を活用した森林整備、 公有林化等を促進していく。都県の森林整備法人等が管理する森林については、共 有者不明森林の契約条件変更を行いつつ、針広混交林化等への施業転換、採算性を 踏まえた分収比率の見直しなどを進める。さらに、森林整備法人等がその知見を活 かして、所有者不明森林に係る所有者の特定や、森林経営管理制度に基づく業務の 受託等を行うことで、地域の森林整備の促進に貢献していく。 奥地水源等の保安林については、水源林造成事業により森林造成を計画的に行う とともに、既契約分については育成複層林等への誘導を進めていく。その際、当該 契約地の周辺森林も合わせた面的な整備にも取り組む。また、荒廃して機能が低下 した保安林については、治山事業による整備を推進する。なお、国有林に隣接・介 在する民有林については、公益的機能維持増進協定も活用し、その整備及び保全を 図る。これらの実施に当たっては、流域治水との連携を図りつつ進めていく。 20 ウ 花粉発生源対策の推進 国民の約4割が罹患し、国民病ともいわれる花粉症に対処するため、スギ人工林 り 等の利用を進めるとともに、花粉症対策に資する苗木の生産や植栽、広葉樹の導入 による針広混交の育成複層林への誘導等により花粉の少ない森林への転換を図る。 また、花粉飛散防止技術についても、その開発等を促進する。 (8)カーボンニュートラル実現への貢献 パリ協定下における温室効果ガス排出削減目標の達成、2050年カーボンニュート ラルの実現に貢献するため、森林・林業・木材産業分野においても、次のような取 組を重点的に実施する。具体的には、適切な間伐等の実施、保安林指定による天然 生林等の適切な管理・保全などに引き続き取り組む。加えて、中長期的な森林吸収 量の確保・強化を図るため、間伐等特措法に基づく新たな措置を活用し、エリート ツリー等の再造林を促進する。その際、森林吸収量の算定対象となる森林の育成・ 管理状況等を定期的に調査・検証し、適切な吸収量等の把握に努めるなど、取組の 効率化を図る。 また、製造時のエネルギー消費の比較的少ない木材の利用、化石燃料の代替とな る木質バイオマスのエネルギー利用、化石資源由来の製品の代替となる木質系新素 材の開発・普及、加工流通等における低炭素化などを通じて、二酸化炭素の排出削 減に貢献していく。さらに、耐火部材等の新技術を活用して非住宅分野等にも木材 の利用を拡大し、HWP 注 (伐採木材製品)による炭素の貯蔵を図る。エネルギー 利用も含めた木材利用については、合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する 法律(平成28年法律第48号。以下「クリーンウッド法」という。)等の運用を通じ、 木材調達に係る合法性確認の徹底を図る。 林地には、尾根部の風衝地や火山地域など風力や地熱による発電の立地条件に適 した箇所が多くある。それらの再生可能エネルギーの利用促進は、カーボンニュー トラルの実現に重要な役割を果たすものである。このため、森林の公益的機能の発 揮と地域の合意形成に十分留意しつつ、林地の適正かつ積極的な利用を促進する。 具体的には、風力や地熱による発電施設の設置に関し、マニュアル整備等を通じた 国有林野の活用や保安林の解除に係る事務の迅速化・簡素化、保安林内作業許可基 準の運用の明確化、地域における協議への参画等を通じた積極的な情報提供などを 行い、森林の公益的機能の発揮と調和する再生可能エネルギーの利用促進を図る。 なお、気候変動に伴う豪雨の増加傾向を踏まえた山地災害への対応、気候変動が 森林・林業分野に与える影響についての調査・研究、松くい虫被害の被害先端地域 における拡大防止等の適応策についても、併せて推進する。 注:「Harvested Wood Products」の略。パリ協定において、搬出後の木材における炭素量の変化を温室効果ガ ス吸収量又は排出量として計上することができる。 21 (9)国土の保全等の推進 ア 適正な保安林の配備及び保全管理 特に公益的機能の発揮が要請される森林については、保安林として計画的に指定 する。その際、土砂流出や土砂崩壊のおそれのある森林については、土砂流出防備 保安林等に適切に指定する。また、衛星画像を活用した巡視等により、保安林の効 率的かつ適切な管理を推進する。 保安林以外の民有林については、林地開発許可制度を通じ、森林の土地の適正利 用を確保する。近年増加している太陽光発電施設の設置に係る開発については、そ の特殊性を踏まえた許可基準の適正な運用を通じ、森林の公益的機能の確保を図る。 イ 国民の安全・安心の確保のための効果的な治山事業等の推進 大雨や短時間強雨の発生頻度の増加、豪雪等により、山地災害などが激甚化・ 頻発化する傾向にあることを踏まえ、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加 速化対策」(令和2年12月閣議決定)等に基づき治山対策を推進する。 具体的には、尾根部からの崩壊等による土砂流出量の増大、流木災害の激甚化、 広域にわたる河川氾濫など災害の発生形態の変化等に対応して、流域治水と連携 しつつ、次の取組等を行っていく。 (ア)山地災害危険地区等における、きめ細かな治山ダムの配置などによる土砂流出 の抑制 (イ)森林整備や山腹斜面への筋工等の組合せによる森林土壌の保全強化 (ウ)渓流域での危険木の伐採、渓流生態系にも配慮した林相転換等による流木災害 リスクの軽減 (エ)海岸防災林等の整備強化による津波・風害の防備 これらの事業を効率的に行うため、山地崩壊リスクが高い箇所等をレーザ測量 などを活用して把握するほか、施工現場へのICT等の導入を推進する。また、 治山ダムの嵩上げ、増厚など既存施設の長寿命化を図るほか、現地の実情に応じ かさ た在来種による緑化や治山施設への魚道設置など生物多様性保全の取組に努める。 これらのハード対策と併せて、山地災害危険地区に係る監視体制の強化や情報 提供等のソフト対策の一体的な実施、地域の避難体制との連携により、減災効果 の向上を図る。また、引き続き、山地災害危険地区に関する判定情報の調査分析 や精度向上に努める。 加えて、国土の保全等に不可欠な森林土木事業を適切かつ着実に実施できるよ う、山間部の厳しい条件など現場実態を踏まえた積算や適切な工期設定等を通じ、 工事や設計業務等の品質確保と担い手確保に取り組む。 22 ウ 大規模災害時における迅速な対応 大規模災害等の発災時においては、国の技術系職員の派遣(MAFF-SAT)、 地方公共団体や民間コンサルタント等と連携した災害調査、復旧方針の策定など被 災地域の復旧支援を行う。その際、被害状況等を迅速に把握するため、衛星画像や ヘリコプター、ドローン等を活用した調査を進める。これらの初動対応とあわせ、 災害復旧等事業を円滑に実施していく。なお、被災規模が大規模で復旧に高度な技 術を要する場合については、地方公共団体の要請を踏まえ、国の直轄事業による復 旧を行う。 エ 森林病虫害対策等の推進 松くい虫被害については、地域の自主的な防除活動の推進を図りつつ、駆除予防 措置、樹種転換等を適切に組み合わせた防除を引き続き実施する。これらの対策に ついては、被害先端地に重点化するとともに、効率的な被害木探査等に係る技術検 証などを行い、その効果を高めていく。また、第二世代の抵抗性品種の開発を引き 続き実施する。ナラ枯れ被害については、ナラ枯れ被害対策マニュアルの普及を図 りつつ、被害の状況等に応じた駆除予防措置、被害を受けにくい森林づくりなどの 取組を引き続き実施する。 このほか、林野火災予防のため、防火意識を高める啓発活動等を実施する。 (10)研究・技術開発及びその普及 研究・技術開発については、森林・林業・木材産業が抱える課題、社会情勢の変 化等に対応するため、「森林・林業・木材産業分野の研究・技術開発戦略」(平成29 年3月林野庁策定)を見直して、様々な分野との連携と対話の促進を図る。 具体的には、環境変動下での森林の多面的機能の発揮に向けた研究開発、森林資 源の活用による循環型社会の実現と山村振興に資する研究開発、多様な森林の造成 ・保全と持続的資源利用に貢献する林木育種等を戦略的かつ計画的に進める。研究 ・技術開発に当たっては、産学官連携の研究開発プラットフォームの活動を活発化 させ、他分野も含めた連携を強化する。 また、得られた成果等に関しては、林業普及指導員の知識・技術水準を確保する ための資格試験の実施、普及員の設置を適切に行うことなどを通じ、現場へ普及し て社会還元を図る。 (11)新たな山村価値の創造 ア 山村の内発的な発展 山村地域での生活を成り立たせていくためには、その自然や風土等を背景として、 住民が主体となり地域資源を活かした産業を育成し、地域づくりを行うことを通じ、 山村の内発的な発展を図ることが不可欠である。 23 このため、地域内での経済循環を生み出すべく、森林資源を活用して、林業・木 材産業を成長発展させていく。その際、規模拡大や生産性向上の取組だけでなく、 中小地場の製材工場等の活性化や未利用材の熱利用などを進めていく。また、農林 複合的な所得確保の機会を創出するため、自家労働による木材生産等の取組も促進 する。林業・木材産業以外の所得確保の方策として、きのこ、木炭、薪、竹、漆等 の特用林産物、広葉樹、ジビエなどの地域資源の発掘と付加価値向上等を図る。加 えて、健康・観光・教育など様々な分野で森林空間を活用する「森林サービス産業」 や、農泊との連携等を推進し、地域外の力を活かしつつ地域の内発力を高めていく。 イ 山村集落の維持・活性化 山村地域を支える基礎的な社会は集落であり、それを構成する家々の協力が相互 に結合して集落を成り立たせている。特に生活の基盤となる農林地の管理及び利用 を協働して行うことは、集落の維持・活性化を図る上で重要である。 このため、関係府省による住居、情報基盤、交通などインフラの確保等の施策に 加えて、農林地の適正な管理及び利用を図る施策を推進する。具体的には、復旧困 難な荒廃農地等への早生樹植栽などによる継続的な管理と収入機会の創出、生活の 身近にある里山林の継続的な保全管理や利用等の協働活動を促進する。 また、集落の新たな支え手を確保できるよう、特定地域づくり事業協同組合等の 枠組みの活用や、多様な人々の農林業体験等への参加を促進する。さらに、林業高 校・大学校への就学、「緑の雇用」事業によるトライアル雇用、地域おこし協力隊 への参加等を契機とした移住・定住の促進を図る。 ウ 関係人口の拡大 我が国全体が人口減少の時代を迎える中、山村地域にあっては、定住の促進を図 るだけでなく、山村地域やその住民と継続的かつ多様に関わる「関係人口」を拡大 させていくことが効果的である。 このため、幼少期からの森林環境教育を推進することで、将来の社会の担い手と なる子供たちの山村への理解・関心を高めていく。また、近年では宿泊型の健康ツ アー、マウンテンバイク・トレイルツアー、自然共生型アウトドアパーク等の取組 が広がっている。このような新しいニーズを踏まえ、「森林サービス産業」の推進 と、農泊や国立公園・温泉地等と連携したワーケーションなどにより、森林の多様 な活用を図っていく。さらに、森林環境税及び森林環境譲与税の創設を契機として、 都市部と山村地域とが交流する取組を進めていく。 これらの取組を通じて、新たなライフスタイルを提案し、都市部の「コト消費 注 」 ニーズを取り込み、関係人口の拡大を図る。あわせて、新型コロナウイルス感染症 の拡大防止と社会経済活動との両立を図る「新たな日常」にも対応していく。 注:魅力的なサービスや空間設計等によりデザインされた「時間」、経験・体験を顧客が消費することをいう。 24 (12)国民参加の森林づくり等の推進 も り ア 森林整備に対する国民理解の促進 森林の有する公益的機能の維持増進の重要性に鑑み、国民一人一人が等しく負担 を分かち合い、森林整備等を進めるため、森林環境税及び森林環境譲与税が創設さ れた。各地方公共団体においては、国民理解の醸成に向け、その活用による森林整 備やそれを担うべき人材の育成・確保、木材利用の促進等の取組を着実に進め、そ の取組状況など使途の公表を行っていく。 イ 国民参加の森林づくり 多様な主体による植樹など森林づくり活動の促進に向けては、企業・NPO等の ネットワーク化、全国植樹祭等の緑化行事の開催を通じた普及啓発活動の促進に努 める。また、国有林におけるフィールドや情報の提供、技術指導等を推進する。こ れらの取組や森林整備の推進等により、10年間で1億本植樹を目指す国民運動を展 開していく。 森林環境教育等の充実を図るため、幼児教育や学校教育等における森林空間を活 用した教育プログラム、人材育成の効果的な方策などの情報提供等を行う。また、 関係府省や教育機関等とも連携し、小中学校の「総合的な学習の時間」等における 学校林活動などを推進する。 (13)国際的な協調及び貢献 国際的な協調の下で、持続可能な森林経営に向けた取組を推進し、SDGsや国 連森林戦略計画等の国際目標の実現を図る。このため、二国間・地域間・多国間で の政策対話、気候変動や生物多様性に関する枠組みの実施ルールや目標設定に係る 議論等に積極的に参画し、貢献する。また、開発途上地域における森林減少・劣化 の抑制、山地災害の防止、違法伐採対策等に貢献するため、我が国の知見や人材等 を活用し、国際機関等のプロジェクトへの人材派遣や資金拠出、民間企業等による REDD+(レッドプラス)活動 注 の促進、海外に適用できる森林技術の開発・普 及などの国際協力を推進する。 注:開発途上国の森林減少及び劣化に由来する温室効果ガスの排出の削減、森林保全、持続可能な森林経営等 に向けた取組をいう。 25 2 林業の持続的かつ健全な発展に関する施策 林業の持続的かつ健全な発展を図るため、目指すべき林業経営及び林業構造の姿を 明確にしつつ、担い手となる林業経営体の育成、林業従事者等の人材育成、林業労働 などに関する施策を総合的かつ体系的に進めていく。 (1)望ましい林業構造の確立 ア 目指すべき姿 (ア)長期にわたる持続的な経営の実現 効率的かつ安定的な林業経営が林業生産の相当部分を担う林業構造を確立する ため、そのような林業経営体を育成していく。これからの林業経営が目指すべき 方向は「長期にわたる持続的な経営」であり、具体的には、 a 森林を所有し、又は長期間経営し得る権利等を取得した上で、 b 相当程度の事業量及び高い生産性・収益性を有することで、主たる従事者等 が地域における他産業並みの所得及び労働環境を確保し、 c 森林資源の保続を確保するための再造林の実施体制を備え、 d 業務に関連する法令や行動規範を遵守し、社会的責任を果たす ことのできる林業経営である。 林業経営体を目指すべき姿へと導いていくため、施策を重点化するなど、効果 的な取組に努める。 (イ)林業経営の主体 長期にわたる持続的な経営を担う主体を例示すれば、森林組合や民間事業者な ど森林所有者から経営受託等した林業専業型の法人、一定規模の面積を所有等す る専業林家や森林所有者(林業経営を行う製材工場など「林産複合型」の法人も 含む。)である。専ら自家労働等により作業を行い、農業などと複合的に所得を 確保する主体等については、地域の林業経営を前述の主体とともに相補的に支え るものであり、その活動が継続できるよう取り組む。 これらの多様な主体が、長期間を要する林業のサイクルを一貫又は連携して担 い、効率的かつ安定的な経営を実現していく。 イ 「新しい林業」の展開 林業は、造林から収穫まで長期間を要し、厳しい自然条件下での人力作業が多い といった特性を有している。このことが低い生産性や安全性の一因となっており、 これを抜本的に改善していく必要がある。このため、従来の施業等を見直し、開発 が進みつつある新技術を活用して、伐採から再造林・保育に至る収支のプラス転換 を可能とする「新しい林業」を展開すべく、次の取組を推進する。 (ア)ドローン等による苗木運搬、伐採と造林の一貫作業や低密度植栽、エリートツ リー等を活用した造林コストの低減と収穫期間の短縮 26 (イ)遠隔操作・自動操作機械等の開発・普及による林業作業の省力化・軽労化 (ウ)レーザ測量やGNSS(全球測位衛星システム)を活用した高度な森林関連情 報の把握、ICTを活用した木材の生産流通管理等の効率化 (エ)「新しい林業」を支える新技術の導入、技術を提供する事業者の活動促進を図 るための異分野の技術探索、産学官連携による知見共有や事業化の推進 (2)担い手となる林業経営体の育成 ア 長期的な経営の確保 林業経営体が、将来の見通しを持ちながら安定的な経営を行い、人材や機械等へ の計画的な投資を行えるようにすることは重要である。 このため、森林を長期間経営し得る権利等を取得しつつ、事業地の取りまとめを 行い、相当程度の事業量を確保できるようにする。具体的には、地籍調査と連携し た森林境界の明確化、施業集約化と長期施業受委託を促進する。加えて、森林経営 管理制度による経営管理権の設定、森林組合系統による森林経営事業等を促進する。 また、市町村森林整備計画に適合した適切な森林施業を確保する観点から、森林経 営計画の作成を促進する。 イ 経営基盤及び経営力の強化 林業経営体が、厳しい経営環境下であっても安定的に収益を確保できるようにす るためには、その経営基盤と経営力を強化する必要がある。 経営基盤を強化するため、森林組合系統については、森林組合法に基づく措置を 活用した事業連携等を促進する。森林組合以外の林業経営体については、法人化や 協業化等を促進する。その際、基盤強化を図る金融・税制上の措置等を活用してい く。特に、創業間もない経営体に対しては、将来性を評価した保証審査等により資 金調達の円滑化を図る。 また、経営力を強化するため、施業集約化等を担う森林施業プランナーの育成を 引き続き進める。さらには、森林組合系統における販売事業や法人経営に関し実践 的な能力を持つ理事の配置、木材の有利販売等を担う森林経営プランナーの育成を 進める。加えて、適切な投資判断など経営方針に対する相談等を行う伴走支援体制 を充実強化するほか、レーザ測量の実施など林業経営を側面から支援する技術や サービス等を提供する事業者の活動を促進する。 このほか、国有林野事業における事業発注、樹木採取権の適切な設定と運用を通 じ、林業経営体の経営基盤の強化に努める。 ウ 林産複合型経営体の形成 近年、原木市場や製材・合板工場等が、川上と連携した再造林のための基金造成 等にとどまらず、森林信託や林地取得等により林業経営を行う「林産複合型経営」 27 の事例が見られる。これらの取組は、林業としての経営基盤を強化するだけでなく、 林業従事者の雇用の安定、木材の生産から加工流通までの効率化、森林資源の計画 的な利用と再造成につながるものと言える。 このため、林産複合型経営体に対しては、金融上の措置を活用して、林地取得や 経営資金の調達円滑化を図る。また、森林信託の導入に係る調査等の取組や、素材 生産や造林作業を行う個人事業主等の組織化などを推進していく。 エ 生産性の向上 林業経営体の生産性は未だ十分な水準になく、その向上を図ることは、収益確保 のために不可欠である。また、人口減少が進む中にあっては、林業生産の各段階に おいて、新技術を活用して省力化・軽労化を図る必要がある。 このため、路網整備と高性能林業機械を適切に組み合わせた作業システムの導入 とその効果的な運用を促進する。加えて、新技術を活用した「新しい林業」の展開 を図るべく、「林業イノベーション現場実装推進プログラム」(令和元年12月農林 水産省策定)に基づく取組を進める。国有林においては、先進的な技術の実証・普 及等を通じて、林業経営体の生産性等の向上に寄与していく。 オ 再造林の実施体制の整備 森林資源を持続的に利用するには、再造林を確実に行うことが不可欠である。ま た、林業経営体が、伐採や再造林等の事業をバランスよく確保することは、労務の 適配置、木材需給に応じた作業の振替等を通じ、経営の安定化にも資する。 このため、再造林の実施体制の整備に向けて、伐採と造林の一貫作業を通じた素 材生産者と造林者のマッチング・協業化の促進、造林作業手の育成・確保、主伐・ 再造林型の施業提案能力の向上等を図る。 カ 社会的責任を果たす取組の推進 林業経営体が、森林を適正に管理・利用する社会的な責任を果たし、それを自ら 明らかにすることは重要である。 このため、林業経営体に対して、業務に関連する法令の遵守、伐採・造林に関す る自主行動規範の策定等の取組を促す。また、市町村における伐採造林届出制度の 適正な運用を図るとともに、当該制度に基づく届出が市町村森林整備計画に適合し ている旨の通知を林業経営体が伐採現場で掲示する取組や、合法伐採木材に係る情 報提供等を行う取組を促す。 28 (3)人材の育成・確保等 林業従事者は長期的に減少傾向にあり、林業生産活動を継続させていくためには、 その育成・確保を図る必要がある。また、林業作業を行う上では、機械操作、安全 管理、採材技術など専門的かつ高度な知識・技能が不可欠である。 このため、「緑の雇用」事業等により、林業大学校等で学ぶ青年や新規就業者な どを支えるとともに、段階的かつ体系的な人材育成を引き続き推進する。また、O JT(職場内教育)の指導者として活躍できる現場管理責任者等の育成を進める。 その際、再造林に係る技術、集材路や架線の設置等の搬出技術、有利な採材技術、 高性能林業機械の効率的な運用方法、ICT等の新技術に係る研修カリキュラムを 充実させるほか、国有林における研修フィールドの提供などに取り組む。さらには、 技能評価試験の本格的な実施により林業従事者の技能向上を図る。この取組を通じ、 外国人技能実習2号職種指定の追加にも対応する。 林業高校に対しては、その指導力向上やカリキュラムの充実を図るため、国や研 究機関等による講師派遣、森林・林業に関する情報提供などを行っていく。林業経 営体の経営者、林業研究グループ等に対しては、人材育成に係る研修への参加等を 通じた自己研鑽や後継者育成を促進する。 林業においても、多角的な視点を取り入れ、多様な人々が活躍することができる よう、その環境整備等を図る。具体的には、女性林業関係者のネットワーク化、女 性の視点を活かしたマーケティング等の取組を推進する。また、就労を通じた障が い者の社会参画を図る「林福連携」を進め、働きやすい職場環境の整備やトライア ル雇用等に取り組む事業者などの取組を促進していく。 (4)林業従事者の労働環境の改善 林業従事者の労働環境の改善を図るため、次の取組を行う。その際、これらの取 組については、各種施策に要件づけることにより、効果的に進めていく。 ア 処遇等の改善 林業については、従事者の所得が他産業に比べて低位な水準にあり、自然条件下 で行う重筋作業も多く、労働負荷が高く厳しいものとなっている。 このため、従事者所得の改善に向け、林業経営体の生産性及び収益性の向上、林 業従事者の通年雇用化、月給制の導入、社会保険の加入等を促進する。また、林業 従事者の技能等を客観的に評価して適切に処遇できるよう、技能評価試験の本格的 な実施など能力評価の導入を促進する。このことにより、他産業並みの所得水準の 確保を目指す。 また、労働環境については、林業従事者の労働負荷の軽減及び働きやすい職場環 境の整備を図るため、伐木作業の省力化・軽労化を実現する遠隔操作・自動操作機 械の開発、休憩施設や衛生施設の整備等を推進する。 29 イ 労働安全対策の強化 林業における労働災害の発生率は、他産業に比べて極めて高い水準にあり、この 状況を改善することは喫緊の課題である。 このため、今後10年を目途とし、死傷年千人率 注 を半減させることを目指して労 働安全対策を強化していく。具体的には、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号) に基づき、特別教育の実施、伐木作業等における禁止事項の遵守、ガイドラインに 沿った安全作業や緊急連絡体制の整備などの徹底を図る。あわせて、巡回指導や研 修の実施、作業安全のための規範の普及、新技術を活用した安全装備の導入等を推 進する。 これらの施策については、都道府県ごとの労働災害の発生状況等を分析し、その 原因に応じた取組を重点的に実施する。 注:労働者1,000人当たり1年間に発生する労働災害による死傷者数(休業4日以上)を示すもの。 (5)森林保険による損失の補塡 火災や気象災害等による林業生産活動の阻害を防止するとともに、林業経営の安 定を図るため、国立研究開発法人森林研究・整備機構が取り扱う森林保険により、 災害による経済的損失を合理的に補塡する。その運営に当たっては、制度の普及を 図るとともに、災害の発生状況を踏まえた保険料率の見直し等の商品改定、保険金 支払の迅速化などによりサービスの向上を図る。 (6)特用林産物の生産振興 きのこ、木炭、薪、竹、漆等の特用林産物については、林業産出額の約半分を占 め、山村地域における農林複合的な収入確保に資する重要な地域資源である。 このため、菌床きのこ培養施設やほだ場など生産基盤の整備、持続的な利用や生 産の効率化を図る技術の開発・改良に取り組むほか、木炭、薪、竹、漆等の生産販 売に係るノウハウの情報提供などを推進する。また、需要拡大に向け、消費者ニー ズに対応した商品開発や販売促進、高付加価値品目を中心とした輸出等を進めてい く。 30 3 林産物の供給及び利用の確保に関する施策 木材産業等が、地域経済の維持・発展に大きく寄与し、林業の持続的かつ健全な発 展並びに森林の適正な整備及び保全に重要な役割を果たしていることに鑑み、流通及 び加工の合理化等の施策を総合的かつ体系的に進め、川上から川中・川下までの相互 利益を拡大していく。 (1)原木の安定供給 ア 望ましい安定供給体制 原木を安定的に供給していくためには、森林資源の保続を確保しながら、その生 産流通の効率化を図っていくことが不可欠である。 このため、個々の林業経営体による小規模・分散的な原木供給の体制から、地域 の核となる者(林業経営体等の組織や原木市場など)が取りまとめ、製材・合板工 場等に対する価格交渉力を高めて、原木を安定的に供給する体制への転換を引き続 き進める。このことにより、生産流通の各段階においてコスト低減と利益向上を図 り、その成果を再造林の実施へと結びつけていく。 イ 木材の生産流通の効率化 木材需要に応じた 適な生産流通経路を実現し、原木を安定的に供給・調達でき るようにするためには、原木の生産流通ロットの拡大、優良材・並材の選別、川上 と川中との協定取引や直送等の取組を進めていく必要がある。 このため、林業経営体の育成を通じた事業量の確保、原木コーディネーターの育 成やICTによる木材の生産流通管理システムの導入等を通じた商物分離の取組を 進める。また、加工流通施設の整備に当たっては、川上と川中の相互関係を強化す る安定供給協定の締結等を推進するとともに、森林資源を循環利用する観点から、 地域における再造林など森林資源の保続に係る取組状況等を踏まえたものとする。 加えて、地域におけるSCM(サプライチェーン・マネジメント注)に係る取組 を進めて、木材製品の需要動向や原木の供給見込み等の情報共有による需給ギャッ プの解消とマッチングの円滑化、川上から川中・川下までの相互利益の拡大を図る。 注:製品の調達・製造から流通を経て消費者等に届くまでの一連の工程を統合的に管理し、全体 適化を図る 手法のことをいう。 (2)木材産業の競争力強化 ア 大規模工場等における「国際競争力」の強化 国産材が競争力の高い外材や他資材に対抗し、建築用材市場における需要を獲得 していくためには、JAS製材、KD(人工乾燥)材、集成材、ツーバイフォー工 法(枠組壁工法)用部材等の製品を低コストで安定的に供給できるようにする必要 がある。 このため、大規模な製材・合板工場等については、引き続き、加工流通施設の高 31 効率化等を図る。また、中規模工場のうち、工場間連携による工程分業や再編等に より規模拡大を指向するものについては、施設の増設改修や再編に係るコンサル ティング等を推進する。なお、施設整備に当たっては、大径材を活用したラミナや ディメンションランバー(規格材)の生産、チップ材の高度利用が可能となるボー ド類の生産等に対応した施設の導入も進めていく。 イ 中小製材工場等における「地場競争力」の強化 中小規模の製材工場等については、地域経済を支える役割を担っているが、規模 拡大を通じた低コスト化等の対応は取りづらく、その特性を活かして競争力を強化 していく必要がある。 このため、高い単価の地域材製品の生産、細かなニーズに対応した柔軟な製品供 給等を通じて、その競争力を強化していく。具体的には、関係者が連携して施主等 のニーズに応える「顔の見える木材での家づくり」の取組を引き続き促進し、優良 材やデザイン性の高い内外装材の活用を図っていく。また、大径材も活用しつつ、 単価の高い板材を始め、平角・柱角など多品目の地域材製品を生産できるよう、加 工流通施設の切替え等を促進する。 ウ JAS製品の供給促進 建築関係法令・安全安心に対する消費者ニーズへの対応や、非住宅分野等での木 材利用の促進を図るためには、寸法安定性に優れ、品質性能の確かな木材製品を供 給していくことが必要である。そのためには、加工流通施設を整備するだけでなく、 それらの製品が生産・利用されやすい条件整備を図ることが必要である。とりわけ、 強度性能や含水率等が明確な機械等級区分のJAS製品の利用を促進することが重 要である。 このため、JAS規格については、科学的根拠を基礎としつつ、必要に応じて、 利用実態に即した区分や基準の合理化等を図る。あわせて、木材産業関係者に対し ては、認証取得等に係る手数料水準のあり方の検討、集成材製品で採用されている 瑕疵保証制度の検討など、自主的な取組を促していく。 か し エ 国産材比率の低い分野への利用促進 木造住宅における部材別の国産材使用割合及び使用量を踏まえれば、横架材や羽 柄材等での利用を拡大していくことが有効である。 このため、重ね梁・集成材・他資材とのハイブリッド等も含めた国産材横架材の 普及、乾燥技術の高度化などの取組を進める。また、設計段階でスペックイン 注 さ れるよう、設計手法の標準化等を図るとともに、プレカット工場への羽柄材加工施 設の導入等を促進する。 注:仕様書や設計図書等の段階において、部材等の採用を織り込むことをいう。 32 (3)都市等における木材利用の促進 国内新築住宅市場の縮小も見据えると、既存の住宅分野以外でも木材利用を促進 して、需要を獲得していくことが重要である。その際、官需だけに依存せず、民需、 とりわけ都市等における非住宅分野、リフォームなどの需要を積極的に取り込んで いくことが有効である。 このため、木材利用促進法に基づき、国自らが率先して公共建築物等の木造化・ 内装の木質化などを推進していく。また、民間非住宅分野等の需要の獲得に向けた 取組を進めていく。具体的には、一般流通材を活用した低コストでの建築事例の普 及に取り組むほか、防耐火規制や構造計算に対応できるよう、耐火部材やCLT等 の開発・普及、それらの部材を使用した建築実証などにより、多様な設計施工のノ ウハウを蓄積する。あわせて、部材の仕様の標準化等も進める。CLTについては、 令和3年3月に関係府省と共同で作成・公表したCLTの普及に向けた新ロード マップに基づき、低コスト化や認知度の向上に向けた取組を着実に進めていく。ま た、関係府省と連携した木造建築物の設計者の育成、設計施工や部材調達の合理化 に有効なBIM 注 の活用推進、建築部材の安全性に関する情報提供等を行う。 リフォーム需要等に対しては、デザイン性や機能性に優れた内装材等の開発、木 塀など外構部への防腐木材など高耐久製品の活用を図るとともに、木材による健康 ・環境貢献度に係る科学的根拠の収集・発信等を推進する。このほか、建築物の省 エネルギー化に寄与する観点から、断面寸法が大きく熱伝導率の低いCLTや、木 製サッシ等の建具の利用を促進する。また、フロア台板への利用、コンクリート型 枠用合板や地盤改良用木杭等の土木分野、畜舎等への利用なども促進していく。 これらの施策の推進に当たっては、関係府省との連携を強化するとともに、地方 公共団体や民間の事業者等とも協力して、木材利用の促進を図る。 注:コンピュータ上に作成した主に三次元の形状情報に加え、室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、 仕上げ等、建築物の属性情報を併せ持つ建築物情報モデルを構築するものをいう。 (4)生活関連分野等における木材利用の促進 木材製品に対する様々な消費者ニーズを捉え、広葉樹材を活用した家具や建具、 遊具・おもちゃ、木製食器、間伐材等を活用した布製品など生活関連分野等への木 材利用を促進し、暮らしと社会の豊かさを高めていく。特にデザイン性や機能性に 優れ、新たな価値や空間を生み出す製品等については、その表彰と様々な広報・P Rの場を提供していく。 33 (5)木質バイオマスの利用 ア エネルギー利用 燃料材については、FIT制度開始以来、未利用材の有効活用と木材需要の下支 えの役割を担い、再生可能エネルギーの普及に貢献してきた。他方、地域によって は、その需要が急激に増加し、既存需要者との競合、森林資源の持続的利用等への 懸念が生じている。 このため、木質バイオマス発電事業の自立化と、燃料の供給元としての森林の持 続可能性の確保を両立させるため、令和2年に、関係府省と関係事業者団体等で「林 業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会」を設置した。本研究会の報 告書に基づく取組を推進すべく、次のとおり、再造林の確保など森林資源の保続が 担保された形での木質バイオマスの利用を図っていく。 (ア)未利用材活用やカスケード利用を基本としつつ、エネルギー変換効率の高い熱 利用・熱電併給につき地域内での利用を推進する。また、全木集材による枝条等 の活用、未利用材の効率的な運搬収集システムの構築、燃料品質の向上などを通 じて燃料材の安定供給を目指す。 (イ)森林資源の保続を担保する観点から、次のとおり取り組む。 a FIT制度における事業計画認定に伴う事前確認について、都道府県林務部 局が、既存需要との競合だけでなく、地域における森林資源の保続を確認でき るようにする。 b 不適正な伐採がなされた木材の利用を防止するため、木質バイオマスの証明 として、伐採造林届出が市町村森林整備計画に適合している旨の通知を活用す る。 c 燃料材供給者との連携を図りつつ、発電事業者等が、燃料用途としても期待 される早生樹の植栽等を行う実証事業を進める。 イ マテリアル利用 木質系の新素材については、従来の建築用材や燃料材等での利用から、新たな分 野・用途への需要拡大策として、また、プラスチック資源循環への対応策としても、 その期待が高まっている。 このため、木質バイオマス由来のセルロースナノファイバー、改質リグニンなど、 化石資源由来の製品の代替に資する新素材の研究・技術開発、用途開発、その普及 を推進していく。 (6)木材等の輸出促進 「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」(令和2年12月農林水産業・地域の活 力創造本部決定)に基づき、木材等の輸出を促進していく。その際、令和12年まで に林産物の輸出額目標を0.2兆円とし、製材及び合板を「輸出重点品目」と位置付 34 けて、従来の原木中心の輸出から、輸出先国・地域のニーズや規格基準等に対応し た付加価値の高い木材製品の輸出への転換を図る。 このため、輸出産地の育成と製品輸出の展開を図る観点から、原材料となる原木 の生産基盤を強化するとともに、輸出先の規格に対応した製品、高耐久製品等を製 造する加工施設を整備する。また、製品等の輸送コストを削減するための港湾施設 等の整備を関係府省と連携して推進する。さらに、木材輸出関係者の組織化を図る とともに、輸出先国での木造建築物の設計施工マニュアルの普及や建築技術者の育 成、団体等と連携した製品のブランディング・マーケティングの実施、GFP(農 林水産物・食品輸出プロジェクト)登録を通じた企業・団体間の連携強化などを推 進する。 (7)消費者等の理解の醸成 持続的な林業経営により生産された木材を利用することは、森林整備の促進、山 村経済の発展のみならず、二酸化炭素の排出抑制及び炭素の貯蔵を通じた循環型社 会の実現に寄与するものである。 このため、消費者等の理解を醸成し、木材を持続的な形で利用する企業等へのE SG投資 注 にもつながるよう、木材利用の意義や効果等のエビデンスの発信を図る ほか、関係府省や木材関係団体等と連携しつつ、「木づかい運動」や「木育」等を 推進する。また、設計事業者や建設事業者、施主となる企業等のネットワーク化、 木造施設・木製品・木材を活用した様々な取組に対する表彰などを行っていく。こ れらの取組の推進に当たっては、毎年10月8日を「木の日」とし、同月を「木材利 用促進月間」として位置付け、デジタル広報等も活用して効果的に展開していく。 さらに、合法的に伐採されたことが確認できた木材・木材製品を消費者・実需者 が選択できるよう、クリーンウッド法に基づく制度の普及、木材関連事業者の登録 を引き続き促進する。これにより、木材調達に係る合法性確認の徹底を図り、デジ タル技術を活用しながら、合法伐採木材等の流通量を増加させる。 注:財務情報だけでなく、環境・社会・ガバナンスの要素も考慮した投資をいう。 (8)林産物の輸入に関する措置 国際的な枠組みの中で、持続的な森林経営、違法伐採対策、輸出入に関する規制 等の情報の収集・交換・分析の充実などを通じて、他国との連携を図るとともに、 「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」や「日EU経済連 携協定」等の締結・発効された協定に基づく措置を適切に運用する。また、経済連 携協定等の交渉に当たっては、各国における持続可能な開発と適正な貿易を確保し、 国内の林業・木材産業への影響に配慮しつつ対処する。 35 4 国有林野の管理及び経営に関する施策 国有林野は、国土保全上重要な奥地脊梁山地や水源地域に広く分布するとともに、 せきりよう 人工林や原生的な天然生林等の多様な生態系を有するなど、国民生活に大きな役割を 果たしている。その立地や資源等の状況から、国土保全等の公益的機能の維持増進、 林産物の持続的かつ計画的な供給、国有林野の活用による地域産業の振興と住民福祉 の向上への寄与を目標として管理経営に取り組んでいる。 このような中、森林に対する国民の要請は、公益的機能の発揮に重点を置きつつ多 様化しており、国有林野に対しては、地球温暖化防止、生物多様性保全の面での期待 が大きくなっている。さらには、国有林野と民有林野を通じた公益的機能の発揮や、 林業経営体の育成、市町村を始めとする民有林行政に対する技術支援など、我が国の 森林・林業の再生への貢献が求められている。このため、「国民の森林」である国有 も り 林野は、森林整備事業や治山事業等と一体的に、国有林野事業として国自らが責任を 持って管理経営し、その組織・技術力・資源を活用して民有林に係る施策を支え、森 林・林業施策全体の推進に貢献していく。 具体的には、水源涵養や山地災害防止、生物多様性保全など重視すべき機能に応じ て、適切な施業を推進する。その際、公益的機能の持続的な発揮と森林資源の循環利 用の観点から、間伐の適切な実施や主伐後の確実な更新を図るほか、針広混交林やモ ザイク状に配置された森林への誘導を進めるなど、多様な森林を積極的に育成してい く。また、生物多様性保全の観点から、渓流沿い等の森林を保全するなど施業上の配 慮を行うほか、世界自然遺産など原生的な天然生林や希少野生生物が生育・生息する 森林を「保護林」や「緑の回廊」として適切に保護・管理する。さらに、気候変動に よる豪雨の増加等に伴い、山地災害が激甚化・多様化していることを踏まえた対応を 的確に行っていく。具体的には、林地保全に配慮した森林施業を進めるほか、民有林 支援も含めた技術系職員の派遣等による迅速な災害対応、重要かつ緊要度の高いイン フラ施設周辺や河川上流域等における治山対策などを計画的に推進していく。 また、木材の安定供給や林業経営体の育成の観点から、需要先との協定取引、民有 林からの出材が期待しにくい大径長尺材・檜皮等の供給、まとまった事業発注・供給 ひ わ だ 方式を通じた事業量の安定化、木材需要が急激に増減した場合の供給調整に取り組む。 さらに、国有林野のフィールドを活用して、低コスト造林技術や野生鳥獣害対策、先 端技術を活用した効率的な森林管理・木材生産手法の開発・実証・普及を積極的に推 進する。 国民の財産である国有林野を、より開かれた「国民の森林」として管理経営してい くためには、森林・林業や木材利用に対する国民の理解が不可欠である。このことか ら、国民の多様な意見を把握すべく対話型の取組、多様な主体と連携した国民参加の 森林づくりの取組、国有林野の保健・文化・教育・観光的利用、国立公園等と連携し た取組を推進し、その保護と利用の両立を図る。 36 5 その他横断的に推進すべき施策 (1)デジタル化の推進 森林・林業の分野においても、リモートセンシング等のデジタル技術が著しく進 展している。森林関連情報の把握、森林資源の造成、木材の生産流通等の各段階で、 これらの技術を適用してデジタルデータを活用した効率的なものへと転換してい く。 このため、レーザ測量や衛星画像等による森林資源情報の精度向上、GNSSに よる森林境界データのデジタル化などを進めていく。また、それらのデータを集積 して、その共有と高度利用を図る森林クラウドを都道府県等に導入していく。あわ せて、木材の生産流通の効率化に向けたICT生産流通管理システムの標準化、標 準仕様に基づくシステムの導入、丸太材積等を効率的に測定できる木材検収ソフト などの現場導入を促進する。これらのデータについては、データ連係を視野に入れ た調査等の環境整備を行い、川上・川中・川下のサプライチェーンの構築、合法伐 採木材の流通等につなげる「林業DX(デジタルトランスフォーメーション注1)」 を目指した取組を進めていく。 さらに、森林土木分野においてもICT等を施工現場へ導入する「i-Construction 注2 」 を促進する。また、補助金申請や各種手続を効率化して国民負担を軽減していくた め、デジタルデータを活用した造林補助金の申請・検査業務を推進するほか、農林 水産省共通申請サービスによる電子化等を図る。 注1:ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させることをいう。 注2:調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までのあらゆる建設土木の生産プロセスにおいて、 ICTを活用して、生産性を向上させて魅力ある建設土木現場を目指す取組をいう。 (2)新型コロナウイルス感染症への対応 新型コロナウイルス感染症の流行は、我が国経済社会に大きな影響を与えた。森 林・林業・木材産業分野においては、経済環境の悪化が住宅需要の減退を招き、そ れに伴い、製材・合板等の製品出荷が減少して原木の受入量も減少した。その影響 は、川下から川上へと広がり、令和2年夏頃を底として状況は改善しつつあるが、 その見通しは依然として不透明と言わざるを得ない。一方で、感染症の流行を契機 として、在宅勤務等に対応した住宅や、地方への移住等のニーズが高まり、新たな ライフスタイルを求める人々も現れ始めている。このような状況を踏まえれば、社 会経済の急激な変化に対応できるよう、リスク分散と新たなニーズの取り込み等を 図り、「ウィズ・コロナ社会」に対応していくことが必要である。 このため、感染状況に応じて、林業・木材産業の経営の継続、需要の喚起等の施 策を適切に講じていく。また、急激な需要減退時に、林業経営体が素材生産作業を 造林作業に振り替えて生産調整を円滑に行えるよう、再造林の実施体制の整備等を 図るほか、木材需給の状況に応じた国有林材の供給調整等を行う。さらに、在宅勤 37 務等に対応したリフォーム需要や、非住宅分野などの新たな需要を取り込んでいく。 加えて、都市部住民の山村地域への関心の高まりを受け、そのニーズを積極的に取 り込み、「森林サービス産業」等の育成へとつなげていく。 (3)東日本大震災からの復興・創生 東日本大震災により大きな被害を受けた海岸防災林については、復興工程表に定 めた事業がほぼ完了した。今後は、植栽した樹木の保育等について、地域やNPO 等と連携しながら計画的に実施していく。なお、その復旧に際して得た知見、試験 研究の成果については、被災地以外での事業にも積極的に活用していく。 他方、東京電力福島第一原子力発電所の事故に起因する放射性物質による森林へ の影響は、福島県を中心に依然として続いている。このため、森林・林業再生を図 る取組を引き続き行っていく。具体的には、森林・木材製品等の放射性物質に係る モニタリングや実証などによる知見の収集、森林整備とその実施に必要な放射性物 質対策、しいたけ原木生産のための里山の広葉樹林の計画的な再生、きのこ生産資 材の導入、関係府省等と連携した特用林産物の検査・出荷管理の徹底等を通じた風 評被害の払拭、バーク等の適切な処理などに取り組む。 6 団体に関する施策 森林組合については、組合員との信頼関係を引き続き保ち、地域の森林管理と林業 経営の担い手として役割を果たしながら、林業所得の増大に 大限貢献していくこと が重要である。 このため、森林組合法に基づく措置を活用し、組合間の多様な連携、正組合員資格 の拡大による後継者世代や女性の参画、実践的な能力を持つ理事の配置等を推進する。 加えて、内部けん制体制の充実、法令等遵守意識の徹底を図る。 また、森林組合系統が新たに運動の基本方向を定め、地域森林の適切な保全・利用 等を目標として掲げながら、市町村等と連携した体制の整備、循環型林業の確立、木 材販売力の強化などの取組を展開していることを踏まえ、その実効性が確保されるよ う系統主体での取組を促進する。 38 第4 森林及び林業に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 1 各種計画等との調和 各般の施策については、「食料・農業・農村基本計画」(令和2年3月閣議決定)、 「環境基本計画」(平成30年4月閣議決定)等に掲げる施策との調和を保ちながら推 進していく。 特に、相互に密接に関連して地域を支えている農林水産業に係る施策を一体的に進 めていく観点から、「みどりの食料システム戦略」(令和3年5月農林水産省策定) に掲げる取組を推進していく。 2 効果的かつ効率的な施策の推進 施策の実施、見直し等に当たっては、その趣旨や内容等について、分かりやすい表 現等を用い、森林・林業・木材関係者等の理解に努める。その際、関係府省、地方公 共団体との連携や情報共有を図るとともに、デジタル媒体を始めとする複数の手法を 効果的に組み合わせた広報活動等を推進する。 3 施策の進捗管理と評価の適切な活用 施策の実施に当たっては、政策評価等を通じ、計画・実行した後の評価を実施し、 改善策を講じていくことにより、進行管理と必要な見直しを行う。さらには、現場で の取組を通じて把握した課題等を的確に分析・評価し、毎年の予算編成に反映させる など、国民のニーズに沿うように対応する。 4 財政措置の効率的かつ重点的な運用 厳しい財政事情の下で予算を 大限に有効活用する観点から、施策効果の検証や ニーズ等を踏まえ、従来の予算を見直すとともに、様々な観点からのコスト縮減に取 り組み、効果的な施策の実施を図る。

New Basic Plan for Forests and Forestry (2021) · Nelum